脱出
ナギの指示でまずはカイを埋葬した、本当に簡易な墓になった。
それが終わると、全てを見ていた人たちが恐る恐る近づいてくる。何があったかは良く分かっていないのかもしれない。
それまで、奴隷兼食用として生かされてきた人たちは、まず言葉が喋れなかった。
ようやく、リーダーらしい人が来て、言葉が通じた。
ナギとリーダーが話し合い、ここに居てはいつまた魔人が来るか分からないということで、ここからは逃げようという話になった。
ただ、町まではかなりの距離があるため、具体的にどのように避難するか話し合いがもたれた。
人々は何百年も支配され続けていたために、解放されたと言っても、あまり実感がわかないのか、嬉しがる様子も見せなかった。
解放ということの意味を分かっている者もどれくらいいるのか、ただ、言われたことにはほぼ全員が素直に従う。
メンバーは直立不動でナギの方を見ていた。頼もしかった。
脱出準備に丸一日かかった。
メンバーはほとんど寝る時間もなかった。
病人や幼い子どもは馬車に乗せてあげ、他は歩いて中央集落へ向かうことになった。馬車の御者はスーラとメイが務める。
ゆっくり歩くことになり、また水の問題から川沿いをルートとして選んだことから15日はかかる計算だった。
昼から脱出作戦が始まった。
先頭にナギがリーダーの男と一緒に歩き、そこから、数百人が並んで歩く。その後ろにゾックが配置され、また数百人が歩き、最後にカースとアデラが配置されている。
脱出作戦開始から3日ほどは大きな問題は起こらなかった。人々はまるで羊のように大人しくナギ達の誘導に従う。
ただ、3日経つうちに、数十人単位で脱落者が出ていることが判明した。いつ魔人が襲ってくるか不明な今、捜索している余裕はない。
また、それまでほとんどナギ達に関わろうとしなかった解放された人たちが徐々に接触を持つようになっていた。
特にスーラは子どもに懐かれているようだ、馬車は保育所のようになっている。
その姿を見てほっとしたのか、人々も少しずつナギ達を信用するような素振りを見せる。
「俺の親父の親父の代、いやもっと前から、俺たちは食用として飼われているだけだった。まさか、解放してくれる人たちが現れるなんて」リーダーの男は何回もナギに感謝の言葉を送る。
「町に着くまでが作戦です、そもそも町に着いても安全が保障されているわけでもない」ナギは冷静に伝える。
それを聞いてもリーダーの男は頭を地面にこすりつけるほどの勢いで感謝の意を表す。
その時だった、人々の列の中央付近、丁度ゾックのいるあたりで大きな悲鳴が起こった。
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