第3話 現在と未来の夢

 梨沙りさだった。5年間、俺を支えてくれた梨沙。地方のライブもほとんど全て付いて来てくれた。その梨沙が、俺をめがけて灰皿を投げつけてくる。


 気がつくと、俺は裸で自分の布団の中にいる。となりに裸の女がいてタバコを吸っている。


 おい、待て。こんな修羅場は経験してないぞ。となりの女は見覚えがあるが、別に何もしていない。


 いや、酔った勢いでキスくらいはしたかな。


 ……。


 ライブハウスのトイレで一発ヤッたかもしれない。


 ……。


 ゴムも付けずに。


 ドゴっと灰皿がまた壁をえぐる。灰皿、何個持ってるんだ? そんな疑問を抱きつつ、俺は逃げ場を探す。布団を出ようとしたら、床がぐにゃりと歪んで体勢を崩した。


 顔をあげると、梨沙がウエディングドレスのような白い衣装を着て微笑んでいる。隣にいるのはあつしだ。


「どういうことだ!?」俺は叫んだ。でも二人には聞こえていない。俺の姿も目に入っていない。


「おい、待って。待ってくれ!」と必死で二人のほうに歩み寄ろうとすると、頭からバサバサと何かが降って着た。嫌な匂いがする。よく見るとゴミだった。体がズブズブとゴミにはまっていく。分別を一度もしなかったゴミの山。


 どさっと頭にまた何か降ってくる。


 中学生の時に万引きしたペットボトルのジュース。


 母ちゃんの財布から黙って抜き取った一万円札や千円札。

 

 借りたまま返却するのが面倒くさくて、引っ越しの時に捨ててしまった図書館の本。

 

 梨沙に出しといてねと頼まれて、忘れたまま放っておいた書類。


 俺はどんどんゴミの山にはまっていく。梨沙と淳は幸せそうに手を組んで向こうに歩いていく。


「おい、待ってくれ! 悪かった。俺が悪かった!」


 そう叫んだところで目が覚めた。汗びっしょりだった。

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