第3話 仕事用のタバコ
夫のパンツを嗅いでから1週間。
残業の日は数日あったがパンツのにおいは変わりませんでした。
元より2週間~1ヶ月程度の出張や残業は付き合った当初から多かった為、今更それが材料になることはありません。
...やきもきする。
ナイロンパンツを好んで履くような男が物的証拠を残すはずもなく、かといって探偵やケータイを見ることには抵抗があります。
となるとやはり残された道は...においしか無い。
1週間もすれば段々と夫のパンツを嗅ぐ行為は作業へと変わりつつあります。一瞬スンと嗅ぎ、洗濯カゴへ戻す。そして、手帳へと書き込む。
そんな毎日を送るにつれ、疑いや苛立ちは少しづつ収まりモヤモヤだけが残っていきました。
しかし、収まりつつあった苛立ちを加速させたのは夫の後輩からの1通のメッセージでした。
夕飯を済ませ、お風呂に向かった夫を後目にダイニングに見てくれと言わんばかりに置かれてるケータイがありました。
消えていた画面が明るくなりつい見てしまった内容が...
「奥さんに怒られないんですか?笑
明日はよろしくお願いしまーす!!」
後輩女か...ロック画面を開け内容を全て見てやろうかと思いました。
彼女とは1度面識があり、おめめくりくりのポニーテールで快活な凛とした声はいかにも夫の好きそうな可愛い子です。
私は夫が浮気しているかの前に、夫と彼女の間でどのような話をして私を除け者のにしているのだろうかと思いました。
内容から察するに私を小馬鹿にしているようにも見え、どうしようも無い苛立ちは脳を停止させ心臓を強く動かし、涙を溢れさせました。悲しみよりも先行してくるのは苛立ちで、私は蚊帳の外なのだと改めて実感しました。
気持ちを沈めるには時間がかかります。
私は夫のカバンから紙タバコを取り出し3年振りに火をつけました。
1本だけ。
1本を吸い終わったら、手帳を書こうと思います。
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