お兄ちゃんが引っ越しちゃう (現代ドラマ)
一軒の家の前に、引っ越し業者のトラックが止まっています。
そしてその近くにいるのは、小学生くらいの男の子と、それよりももっと小さな、泣いている女の子。
女の子の名前はルリちゃん。
ルリちゃんはグズグズと、涙で顔を濡らしています。だって仲良しだったお兄ちゃんが、引っ越してしまうから。
「そんなに泣くなって。二度と会えなくなるわけじゃないだろ」
「えぐっ。だって、だってー!」
近所に住んでいた、三つ年上のお兄ちゃん。ルリちゃんとお兄ちゃんはとても仲良しで、よく一緒に遊んでいました。
お兄ちゃんが小学生になってからは、学校の友達といることも多くなって、遊べない時も多かったけど、それでもルリちゃんはお兄ちゃんに懐いていました。
「ほら、これあげるから、元気出せって」
お兄ちゃんが差し出してくれたのは、ルリちゃんが大好きなチョコレート。
お兄ちゃんはルリちゃんと遊べない時は必ず、こうしてキャンディやチョコレートといったお菓子をあげていたのです。
ルリちゃんはいつものように、そのチョコレートを受け取りました。だけど大好きなお兄ちゃんが遠くに行ってしまうのはやっぱり悲しくて、涙は止まってはくれません。
「ルリ、遠くに行ったって、兄ちゃんはお前のこと大好きだからな」
ルリちゃんの頭をナデナデ。大事な妹分を泣かせたくない、優しいお兄ちゃんです。
ルリちゃんもどうにか涙をこらえてくれて、いよいよ別れの時。家財や家族を乗せたトラックが遠ざかって行く中、お兄ちゃんが窓から顔を出して、ルリちゃんに向かって手を振ってきます。
「じゃあなー、ルリー! また会おうなー!」
お兄ちゃんはずっと、手を振ってくれました。仲良しだったルリちゃんの名前を呼びながら、ずっと。
やがて姿が見えなくなって、残されたルリちゃんの堪えていた涙が、また溢れてきました。そして……。
「えーん、お兄ちゃんがいっちゃったー! これからダレにおかしもらえばいいのー!」
……おいこらルリちゃん。もしこれを聞いてたら、今度はお兄ちゃんが泣きたくなるからな。
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