夜の学校での肝試し(ホラー)
真っ暗な夜の校舎の中を、息を切らしながら駆けて行く。
足を止めるな。少しでも気を抜いたら、奴らに追いつかれる。そうなったら終わりだ。
くそ、誰だよ。肝試しなんてしようって言い出したのは。
ほんの軽い気持ちだった。夜の学校にみんなで忍び込んで、ワーワー言いながら暇つぶしができれば、それだけで良かったんだ。なのに、どうしてこんな事に……。
騒がしい昼間とは違って、静まり返った校舎の中では、足音がよく響く。だけどそれ故に、いくら逃げても足音で居場所が分かってしまうんだ。
だけどそれでも、走るのを止められない。立ち止まったら捕まってしまう。すでにガクガクになった足を無理やり動かして、必死になって逃げて続ける。
途中ではぐれてしまった、ケンジとタツオはどうなっただろう?
いや、アイツらの心配をしている場合じゃない。薄情かもしれないけど、今は自分のことだけを考えないと。
だけど……。
角を曲がった瞬間、廊下の先にいたヤツを見て愕然とした。
ヤツも俺に気付いて、もの凄い速さでこっちに向かって駆けてくる。
ヤバい、逃げないと。だけど後ろからも、ヤツの仲間が迫ってきている。前に進んだら捕まる。かと言って、戻っても捕まる。どうすればいいんだ、どうすれば……。
――ッ!
背後からやって来たソイツに腕を掴まれて、そのまま地面に、抑えつけられる。
ヤツらは、迷う時間すら与えてはくれなかった。
くそ、放せ、放せよ!
だけどそんな俺の叫びは、校舎の中に虚しくこだまするばかり。そして俺を取り押さえているのとは別のもう一人がすましたような、よく通る声を響かせた。
「あー、あー。こちら山岡。センサーに反応があった○○高校で、高校生と思われる不審者を確保。繰り返す、○○高校で……」
無線で連絡を取る、セコムの警備員。
次の日、夜の学校に無断で侵入した俺達は、ごぞって停学になった。
やっぱ遊び半分で、肝試しなんてするもんじゃないな。
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