宝くじ (現代ドラマ)

 宝くじ。

 当たれば億万長者。当選率は限りなく低いけど、もしも万が一当たったら、人生を大きく変えることができるかもしれない、夢の詰まったアイテム。それが宝くじだ。


 今日はその宝くじの、当選番号の発表の日。たくさんの人が一攫千金を夢見て、ドキドキしながら発表を待っている。

 だけど俺は、全くドキドキしていない。どんなに期待したって、俺が当たることはないって分かっているから。何故なら。


「そりゃ当たらねーよ! だってお前、一枚も買ってねーじゃん!」


 ここは会社の休憩室。スマホで当選番号を確認していた先輩が、実に的確なツッコミを入れてくる。


「いいか、買わなきゃ絶対に当たらないんだ。大金が欲しかったら、ちゃんと買わないと」

「それじゃあそう言う先輩は、今回は当たったんですか?」

「あ、当たったとも……300円も」


 それって、10枚買ったら必ず当たる300円ですよね。つまり今回も、空くじばっかりだったということか。


「まあ、宝くじなんてそんなもんですよね。大体名前からして、良くないですもの」

「何故だ? 宝くじって名前の、どこがいけないって言うんだ?」

「いいですか先輩。宝くじはね、『多空くじ』って書くのが正解なんですよ!」


 多空くじ……多くは空のくじ。つまり普通に考えたら高額当選なんて、まずしないということ。だから俺は、宝くじを買わないんだ。

 当たりもしないクジを買うよりも、小さいお金をコツコツ貯め続ける。そっちの方が、よっぽど有意義だと思いますよ。

 



 ……数ヵ月後、同じように宝くじの結果を調べていた先輩が、三億円の当選番号を見てガッツポーズをとった時は、買っときゃよかったと思ったけど。

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