千文字以下の小話たち

学校一の美少女が冴えない俺を好きに……なるか！ （現代ドラマ）

　最近ラノベで、学校一の美少女が、冴えない主人公に惚れる展開って多いじゃないか。けど、そんなわけあるか！　学校一の美少女が冴えない男と付き合ったって、欠片ほどの得も無いわ！　

　わざわざそんな愚行をするような、バカな女なんていねーよ。学校一の美少女は、学校一のイケメンと付き合うに決まってるだろ。

　冴えない男と付き合うなんて、そんなのありえない。ファンタジーだよファンタジー。

　で、ここからが本題。自分で言うのもなんだけど、俺は冴えない部類に入っている、何のとりえもない平凡男子だ。なのに分不相応にも、学校一の美少女に恋をしてしまったんだ。

　普通に考えたら、こんな恋は不毛。さっさと諦めた方がいいに決まってる。そう分かっているのに……。

「あれ、有田君髪型変えたんだ。それに、メガネも無くなってる」

「あ、ああ。ちょっとイメチェンしようと思って。おかしいかな？」

「ううん、全然。前より格好良いよ」

　髪型を変えて、メガネからコンタクトに変えた俺の事を、彼女は褒めてくれた。

　よし、思い切って、生まれて初めて美容室に行った甲斐があったぜ！

　彼女に俺の事を見てもらいたいから。振り向いてほしいって思ったから、俺は自分を変える決意をしたんだ。

　適うはずの無い不毛な恋だと、笑いたければ笑うがいい。だけど、何もしないで諦めたくはなかった。

　少し見た目を変えたくらいじゃ、学校一のイケメンになれないって分かってはいるけど、自分を変えるきっかけにはなる。

　待っているだけじゃ、彼女が俺を好きになってくれる事は絶対にない。だから俺の方から動かないと。

　冴えない俺にも、いつか彼女くらいできると思っている野郎ども、幻想を抱くな！　

　好きな奴がいるなら、自分から動け。でないと一生、来もしない『いつか』を待つだけだ！

　だから俺は、一歩を踏み出す。本当に小さな、ミクロ単位の一歩だけどな。