自分勝手な彼 (現代ドラマ)

 真夏の夜。真っ暗な部屋の中、私は一人布団の上で横になっている。


 時おり、開かれた窓から風が吹いてくるけど、部屋の中にこもった熱を吹き飛ばすには力不足。だけど熱い部屋の中とは違って、私の心は冷えていた。


 原因はハッキリしている。それは彼が、側にいてくれないから。

 彼はとても我儘で自分勝手。都合の良い時だけ私に近づいて来て、こっちの都合はまるで考えてはくれない。

 一緒に暮らし初めてからずいぶん経つというのに、彼の奔放さが収まる兆しはまるで見えない。


 私、知ってるよ。本当は彼、私以外の人にも良い顔をして、愛想を振りまいてるってこと。

 今日帰ってきていないのだって、他の人の所に行ってるから。私が何も気づいていないとでも思っているのか、それとも全部分かってて、それでも構わないだけなのか。

 あんな奴の事なんて、もう知らない。こっちから愛想をつかしてやるって、何度思った事か。もう数えるのも面倒になってきた。だけどそれでも、私は彼の事を求め続けている。彼の心が、私に向いてないかもしれないと思って尚、この関係を終わらせることができない、ダメな女だ。


 ……不意に、微かな物音がする。どうやら彼が帰ってきたみたいだ。

 だけど何を言えば良いのかもわからずに、ただひたすら、寝たふりを続ける。


 あ、布団の中に潜り込んできた。今日は甘えたい日なのか、柔らかな感触が首筋を襲い、くすぐったさで思わず声が出そうになる。

 今までほったらかしにしていたと思ったら、いきなりこれ? もう勘弁してほしい。


 だけど感じる彼の体温を、つい心地よいと思ってしまう自分がいる。

 暑苦しいはずなのに、彼の暖かさは嫌いになれない。

 そんな私の耳元で、彼は小さく囁いた。


「にゃ~」


 ああ、もう。本当に君は、自由気ままなワガママにゃんこ。

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