後後234 つまらん企みは・・・


「それじゃ、当日は博子を生贄に捧げるために、泉さんがうまく誘導してくださいね。」

「・・うむ、俺しか居ないよな、仕方が無い」


「とりあえずそんなとこでいいですか?」

「まぁミイラ取りがミイラになるって感じがしないでもないけど、いんじゃないか?」

「その博子さんとお客様達が相乗効果に?」アニャータ・・・


「ま、そーなったらそーなったで、そっちで盛り上がってくれれば放置できるし」

「そうですね!」


華子という要素を忘れているかもしれないガクと泉。

しかもオータを隔離することを全く考えていないガクと泉。




その頃オータは

というか、そもそもオータは領主様の屋敷でどんな仕事をしているのか?


領地経営業務は今までの領主様の側近たちがそつなくこなし、更にガクが現れてからの領内の変化の対応にもすぐに慣れ、うまくこなしている。

勿論外国要人などが訪問してくる等の対応もそつなくこなし、そのチームの仕事っぷりには領主様以外にも定評がある。

そんな中にオータが入ると「破壊されちゃうなー」と思った領主様。

オータ特別室というのを設け、一般的ではないことに対応させている。


ネタ(仕事)はオータ本人が拾ってきてもいいし、領主様が与えるときもある。仕事がなけりゃ無くても良い。ルーチンワークではないのだ。前回はクマが他国に建物を建てに行く時に付き合った。現地の要求でクマが理解出来ないことも多く、現代人知識でどうにか双方を理解できるオータが互いに理解させあったりしたこともある。クマは基本和式だけど、他国は洋式だからね!


最近は結構ひましている様子だ。

ただたまに王都の王妃様のところに顔を出しに言って、音楽関係で幾分手助けを出来たりもしている様子。

かき回しているかどうかは不明。


なので、ひましているのだ。

暇が続いている者が求めるのは?刺激だ。面白いことだ。

困ったもんである。



更に

博子は何をしているのだろうか?

勿論、未だ一日中お稽古ごとに追われている。

一向に上達しないので、教える者達は出口が見えないで心底困っている。

その苦情を言った。このままでは延々と続けなければならないので、博子ができることを教えるのが良いのではないか?と。

が、

基礎学問、躾(マナー)、礼儀、ダンスなど一般教養で最低限のこと、なのだ。華子の側にいるものとして最低限必要なこと。妥協はできない王妃様。


博子ももう脳がテンパっており、おかしくなっている。

もし、これが自由という場に放たれたらどうなるであろうか?

恐ろしいことである。



ガクは余計なことをしなければよかったのだ。

が、それを知る者はいない。


ーー


今日も夕方には仕事は終わる。

アニャータが来て、トリミングを覚えてくれたので捗る(はかどる)のだ。

今までだと遅くまでお客がいた。

今は自分の番が遅くなりそうだと思ったら、帰ってくれる。なので夕方の人が終わったら、もう待っている人(獣人)はいない。

というか、実際はアニャータに気を使っているんだな。


それでも嬉しい。アニャータに気を使ってくれるのが嬉しいのだ。


泉さんも終わりまでいたので、3人で食事に行く。

「今日は、もう一軒の方に言って見るか?」泉さん

「いいっすね。アニャータ、もう一軒の食堂って行ったことあったっけ?」

「食堂というより居酒屋な。昼間はやっていない」泉さん


「ないです。行ってみたいです」

「んじゃこっちだ」と、泉さん


もう客はそこそこ入ってた。

魚や肉などの焼き物を頼んで、アニャータも飲むというのでエールを頼んだ。


そこに領主様が入ってきた。

え?

「おう、今晩はこっちか」領主様

「ええ、領主様こそ?」

「うむ、、少しな」

(訳ありかな?)俺

(言うまで訊かぬほうがいいぞ)泉さん

(りょーかい)


泉さんが横のイスを引くと、領主様はそこに座った。

俺らが頼んだものを訊き、それから領主様は幾つか他のものを頼み、酒を「冷でいいんだよな?」と俺らに聞いてから一升瓶でたのだん。一升瓶は使い回し。ガラス器は高いからね。


なんかすごく飲みたいことがあったのかな?


でも言いそうもない。俺らには言わないほうがいいことなのかもしれない。領主様は相手を気遣う人なのだ。


俺らは領主様の相手をし、遅くまで飲んだ。


通常、飲み明かす時は明け方まで保つように飲むのだが、夜半にはつぶれてしまった領主様。


「なんか、このまま離宮に一人で寝らせるのもなんだな、」泉さん

「ええ、少し心配ですね」

「じゃ、ガク、お前んトコに俺と領主様が泊まるわ。」

「そうっすね、いいよね?」とアニャータに振る

「勿論です」




俺の屋敷の広い部屋、子どもたちが午前中にお勉強に使っている部屋に布団を並べて敷いて、領主様を中にし、俺と泉さんで両側を固め、俺の逆側にアニャータが寝る。


夜中、小声で寝言が聞こえた。知らぬ女性の名前。奥方だろうか。

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