後後235 10日前頃だから領都に行く
それから数日後、だいたい式の10日前ってこのへん?と思った時期に領都に向かう。
今回は駅馬車。乗合馬車だ。この間怖い思いしたんでチャーターはしない。
乗合馬車の停車場に早朝に行って待っている。停車場は街道近くになる。迎賓館の脇の道が街道に向かっている。
ちなみに、小館の領主別荘には密かに小さな転移門が設置されていることをガクも泉もそんちょも知っている。が、大急ぎの場合をのぞいては使わせて貰わない。旅に慣れて以降、機会が有れば馬車で移動している。
停車場には小館始発の馬車が来るか、南から来た馬車が北に向かい途中にここに立ち寄る。客は乗れれば乗る。
昔本数の少なかった時は、屋根の上だろうと場所があれば載らせていた。乗れないと翌日までまた待つのだ。御者はそれがかわいそうなのでどうにか載せる。他の客も狭くても文句言わない。自分がその立場だったら乗せてほしいから。
今時はそんなに混むことはない。本数が増えたのだ。南から来る馬車は日に5−6本、多い時は10本くらいあるという。
小館始発は基本朝のみ。客が多いと2台出すとのこと。
で、
「安心してください、ほとんどが普通の高速馬車です。御者も、どちらかというと速いのは苦手な人です」
と、券売りのオネーチャン。
俺らの他にも被害者多い様子だね!!
南からの馬車が来た。席は2つしか空いていないので後ろの客に譲った。
ほどなくして始発馬車が来た。
他に客はいなかった。
途中で拾うことも少なくないので、満員にならなくとも適当に出発する。大体、今日中に領都に着けばいいかな?程度なのだ。
乗り込む時に御者に券を渡す。御者は出発前に発券のネーチャンにそれを買い取ってもらう。ねーちゃんは売った額から1割引いた額でそれを買い取る。
いなかにいくと本数少ないので発券ネーチャンはいなかったりする。でも客が少ないので御者が直接やり取りすればいいだけ。
客が多いところは停車場の建物の維持のこともある。建物は大概街や村が建てる。で、発券の者が居ない場合はその街や村で建物維持をしなければならない。
客が多いところは御者たちが知り合いなどから任せられる者を選んで発券者になってくれと依頼。
発券者は発券の利ざやを食い扶持として、停車場の建物維持をする。が、利ざやだけだと食っていくだけだ。他に畑とか持ってれば別だが、夜明け頃から午後の茶の時間くらいまで停車場にいなければならない。ちょうど畑の時間と重なるので無理。
なので、発券時間だけ、同時に軽食や飲み物などの販売もしている。
そこで少し稼いで、停車場の修理などの分が出るのだ。停車場の維持とはそういうことまでを言う。なので責任感があるかどうかは凄く大事。
ここ小館の停車場はとてもよく維持されている。
俺らの後からお客が1組み乗ってきた。それから程なく出発した。
あまり遅くなると到着も遅くなる。御者は明日も朝が早いのだ。なのでなるたけ遅くはなりたくない。
馬車は街道の中央線側を走るが、客が道端に立ってると手を出すかあげる。それを見た御者は馬車を左車線に移してから道端に寄せて停める。
昼までに6人拾った。12人席の馬車なので席はあと2つ。しかし屋根と荷台に数人載せられる。
昼に小さい村に停まった。村の出入り口に、街道の馬車の客達用なのだろうか、茶店、食堂、雑貨屋がある。
雑貨屋を少し見てから食堂に入る。
他の客を見る。御者はヤマメそばを食べている。消化がいいからなのか?御者の多くは昼はそばを食べているのが目立つ。
俺は鳥そば。山鳥のとりにく。アニャータも同じく。泉さんはヤマメそばにした。冷酒で。
そばは早く来た。さっと食べられ、そのあと茶店に行ってみる。
和菓子、団子と大福とかあった。焼団子に砂糖醤油を塗ったもの、草団子にあんこをつけたもの、あずきの餡の豆大福、草餅の大福など。
一つづつ買って食べてみた。うまいので、領主邸に行って皆で食べようと大量に買った。
泉さんが昔シューレに貰ったストレージ持っているので問題なし!
夕方遅い時間に領都に着いた。
なんかやっと着いた感半端ないけど、でも少し旅感があったかな。それは少し嬉しい。
停車場から馬車を拾っていく?と泉さんとアニャータに訊く。2人とも街を歩きたいと。
もう夜だが、流石に領都だけあってまだまだ人通りも多く、店の多くは開いている。
「あれ?泉さん、領主様に今日行くって連絡入れてます?」
「いや?お前は?」
「いえ、俺も何も」
「・・・・・・・・宿、とるか」
「いいっすね!」
別に前もって行くといっておかなくてもダイジョブなんだけどね。
でも、今晩は宿に泊まることになった。
おみやげのまんじゅうとか団子はストレージの中なので保つからダイジョブ!
大通りを奥に向かって歩いていく。
「アニャータ、ここらへんははじめて?」
「そうですね、何度か来たことあります。」
「だそうなんで、泉さん、裏通り行かない?」
「そうだな。」
俺らが旅に出ているとき、どこの街でもお気に入りは裏通りだった。
上っ面の顔ではないその街の顔が見える。良いものが多い。多分、ぼったくりがあったとしてもほとんど表通りじゃないかな?くらいにどこでも裏通りは問題なさそうだった。
多分、治安の良さに依存してると思う。国全体治安が悪い、もしくは南米みたいに全地域治安に問題あるところは、大都市では裏通りはほぼ危険でしか無いと話を聞いたことがある。
が、俺らがいるこの世界、この大陸は、人々は正常で治安はすこぶる良い。
裏通りは、大通りから見て市場のあるブロック側が大体食料品関係が多くなる傾向だし、喫茶店とか食堂が多い事が多い。
だから宿もこちら側に多くなる。
銭湯は、市場の近くの下町側にあることが多い。
なので市場の近くが便利だし、何よりおもしろいのだ。
”美味しい宿”、まぁ、、
”魔獣肉の宿”、・・・・これはそそられるな、と泉さん。覗くと、一階の食堂に客は多くない。?・・。却下だ、と泉さん。
”まっちゃん宿”、誰だお?、やはり一階に人気は少なく、、
”市場の裏の宿”、一階満員。泉さんがずかずか入っていく。「部屋あるかー?」「ごめんね嬢ちゃん今日は満員なんだよ」「・・・他におすすめの宿あるか?」「市場の向こう側になるけど、市場のこっち裏の宿ってのがある。そこもメシウマだぞ?」「ありがとう!」
と、泉さん、宿情報確保。
ぐるっと回って市場の上手の路地に入っていく。ま、幾分領主様の邸に近いし。
あった。見逃しそうな小さい看板。でも一階の食堂はさっきの店ほどではないが、混雑している。
部屋はあった。2つとる。
食事の前に銭湯に行こうとなった。馬車で移動してくると埃がすごいからね!
通りの向こう側に銭湯が見えた。でかいな。
「なんか、ここにあった数軒に随分優遇して移転してもらったらしい。でもガクの風呂釜が出来た時、領主様はぜひあの感動を皆に味わってもらいたいって、かなり無理したらしいぞ。」
へぇ、
「その甲斐あって、ってな感じですね」
風呂屋の入り口は出入りするひとがひっきりなしだ。
「なんでもな、ここにいた10軒ほどの家、引っ越した先が風呂から遠い。なので、その10軒用にそこに風呂を作ってあげたらしい。それも、皆最初は風呂がどんなに良いのかわからなかったらしいので、領主様の邸に泊めさせて毎日風呂に入らせたそうだ。」
すげぇ、でも
「なんでそんな話知ってるんですか?」
「なんだったかな?晩酌してて、なんかおまえの話になった時だったかな?」
・・・・・そーですか。肴なわたしw
で、アニャータと泉さんが女湯に入っていった。
男湯。人が多いが、
それ以上に風呂場はでかかった!!
脱衣場、向こう側に声届くかな?
風呂。浴槽が5つ?
一つ一つの湯を触っていった。
両脇が少しぬるめの湯。その内側が熱め。真ん中が、湯の花が入った湯。
獣人が獣姿で入っていた。洗い場の端を見ると、排水口の蓋が粗めの格子だ。もとから獣人が入ることを前提に作ってあるわけだ。やるな!!
これはモフ達にやさしいお風呂である!!
俺は気を良くし、鼻歌を歌いながら湯に浸かる。勿論湯の花の湯。
「にいちゃん、通だね?」
と、側に浸かっている獣人のおっちゃん。
「あ、これダニ取れるからいいでしょ!」
「そんなことも知ってるのか」
「まぁ当然」
当然なのか?とその虎型獣人は呟く。
「湯の花が入った湯は温泉と同じで体の中を温めてくれるんだ。寒い時期は特に良い♪」
「そう言うよな。何度も浸かっていると、それが判ってくる。冬はこれは欠かせない。」
「獣人には特にね!冬はダニとかが温かい毛皮に逃げてくるんでたかられやすいだろ?」
「そういう話だな。俺はもうずっとこの湯なので、ここができてこのかたダニなんぞにたかられたことないわ!」
あっはっはっは×2
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