第309話 後後184 ニラ虫と胡蝶の夢と次行かない


夢を見た。見ているんだな、と自分でなぜか判った。


あれから何年経ったのだろう。

こっちの世界に来てから、どのくらいの年月が経ったのだろう。

泉さんもシューレもかわらない。

熊は年取って隠居し、村長は墓の下。

太狼ももう4人子の親。カタリーナでさえ子をなした、いや、でさえ、はないな、今は、というか結構前からもうまともだし。


子供隊ももう何世代目だろう。


泉さんの村は増え続け、東の大陸にも顔を出している。

そういうのを押し付けられるぴったりな人材なのだろうか。


シューレも武国の食をかなり制覇し、「先が見え始めた!」と喜んでいる。いつになることやら、だが。

そんなシューレ、南によくわからん食材がある大陸を見つけたらしく、たまに獲りに行っている。


将軍様も領主様も代替わりし、皆隠居。かつての勢いはあまり見られず、結構おとなしく茶飲み友達たち楽しくやっているようだ。


「じいちゃん」

「おう、一朗太、うまそうなのを釣ってきたな」

「だろう?へへっ!」

釣りの成果を見せに来たようだ。

可愛い孫だ。

孫は、、4人ほどいるようだ。


アニャータ、と、俺の子どもたちは2人。その子どもたちが2人づついる。

たまに、アニャータの兄弟達のところに顔見せに行くが、もうあまり村から出なくなっているようだ。体がしんどいのか?


「あなた」

アニャータが呼ぶ。

「おう、どうした?」

「茶菓子を用意しましたんで、お茶にしましょう」

「そうか、、有り難い、、そろそろ休もうかと思っていたところだ」俺は庭の手入れをしていたようだ。


嘘だ。老人になったこの体でも、疲れはしない。なぜかしらない。病気もしない。怪我もしたこと無い。

アニャータも子供の頃は病気も度々罹ったというが「小館に来てからそれもなくなりました。この村の空気や水が合うのかしら?」と言っていた。


この村には病気は殆ど無い。周辺は少しだけ。領内や国内に風邪が蔓延しても、ここは誰もひかない。

馬鹿だから?と疑われているようだが、病気になるよりバカでいい。


ヒ王夫妻は孫を連れてしょっちゅうやってくる。孫はじいさんばあさんに突っ込みっぱなしだ。いつもぜいぜい言っている。息継ぐ暇もなく突っ込んでる様子だ。いい孫を持ったもんだ。


西の大陸のドラゴン達はご顕在。長命だからね。


華子姫は泉さん並とは言わないが、それに近い剣士を婿にとり、女王やっている。将軍職は旦那に。

博子は相変わらず護衛だが、人狼の旦那を貰って旦那は将軍の護衛。



縁側で茶を飲んで、せんべい食って、外で遊ぶ孫達を眺める。

「幸せだな・・」自然に出た

「そうですね」アニャータ


まぶたが重くなってきた、、ああ、眠っていいのだろうな、、、

(さあ、次に行こうか?)

どこからかそんな声が聞こえてきた・・・・







「ガク、、ガク、、、起きろ」

・・・・

ガバッ!!

はっ!!!

「ここはどこ?俺は誰?!!!」


「「・・・・・・・・・・・・」」

「お前はガクだ」

「ここは私の店だが?」


泉さんとシューレ。


はぁーーーーーーー、、、、、

息を全部吐ききった


「よかったぁーーーーーぁぁああああああああっつ!!!」

???????×2


怪訝な顔の2人に今見ていた夢の話をすべてする。

よくもまぁ覚えていたもんだ、って自分でも思うけど、、、


シューレもイスに座って茶を貰って飲みながら俺の話を聞いていた。


で、起こされたとこまで話した。


「・・・・・・・・・・・・・」

泉さん、無言でシューレを見る。


「・・・・・ああ、、うん。単なる夢じゃないぞ、多分。」シューレ

はい?


「よかったな、、行くところだったぞ?」

どこにですか?


「”次”に行かされちゃうところだったぞ?」シューレがいい切る。


「うむ、、、雰囲気、不吉な夢な気がした」泉さん

「流石にわかるか、、」


「おまえ、多分、次に行くことを拒否して、まだここに居たいって言ったんだろうな」シューレ

「うむ、、」泉


「ガク、おまえ、ここで寝る直前の記憶あるか?」シューレ

「えーと、、晩飯?」

「今は昼だ」

・・・・

???


覚えていない?

いつから覚えていない?


昨日、、

「昨日、泉さんがニラ虫釣ってて、子どもたちに教えていた」

シューレと泉が顔を見合わせる。


数日前のことだったそうな。

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