第276話 後後151 西の大陸、元西の国


西の大陸

西の国があった荒野


ぼろをまとった者があるいている。

しっかりした足取り

だが、急いでは居ないように、目的地があるのかないのか、といったような


ときおり、懐中から何かを出し撒くしぐさをする

そしてまた歩き出す


鼻歌だろうか、その者の発する音が風に載る


陽が沈むと、その者も歩みを止め、野営を始める。

小さな穴を掘る2方面に斜面を付け。

食べ物は食べないようだ。

懐からちっさいポットを出し、革袋の水を入れ、ひとつまみの葉を入れ、

穴に懐から出した小石を放り込み指で火を付け、

ポットの底より小さい穴にかぶせるようにポットを置く。


ほどなく湯が沸く。

地べたに座り、

懐中から木のコップを出し、茶を注ぎ、口にする。


フードを払い、夜空を仰ぎ見る。

男は、わずかに恨めしい目を星空に向ける。



男はどこからとも無く現れ、元西の国のあった場所の外周をぐるりと周り、徐々にその円を小さくしながら渦巻状に中心に向けて歩いていた。


たまに気づくように立ち止まり、何かを撒く仕草をし、そして鼻歌を歌いながら歩き出す。それを幾度繰り返したか。


髑髏さえ残さない土地。そういう土地。


南部と北部は守られていた。それぞれの間にある山脈より、それぞれ、北、と、南。

全く違う世界であった。違う世界に作られていた。

いや、あちらが自然というべきだろう。


いびつに作られた土地は治さねばならない。


海に沈めて治したこともあった。いや、其の大陸は死んでいたので再生のために沈めた、か。


ここは大陸全体がそうであったわけではない。

大半であるが、北と南の自然な状態に挟まれ、生きてはいた。


ただ、別種のものになっていた。

それが広がると、少しまずいことになる。数千年もあれば広がっていくだろう。


なので、

ここを「善き」土地にし、活きる土地になるように見守る必要があった。


ここで手を抜けば、いずれどこかでそのツケは必ず払うことになる。

男はそれを知っていた。

払うツケ、それは、またこの土地をこのようにまで落とし、またやり直すことになる。

ならば、抜かりなど全く無いようにやるしかない。


俺がここを見ていくのだから。

男は再度肝に命じた。



シューレの土地は最高だ。

あそこの生き物は最高だ。

あそこまでやってやる。

なぁに、あっというまさ。


そう、ここに来るまでもあっと言うまであった。

物心付くと村に居て、村から出て、食い物を食い歩き、作り、研究し、

そして、

ここを与えられた。


おまえはここの大精霊として、土地を癒やし、生かし、活かし、豊かにせよ。


ひさびさというか、はじめての仕事だ。


多くの精霊達は、其の生涯仕事を与えられずにのんきに過ごし、ある日消えていく。


俺が与えられるなんてなぁ、、思いもよらなかった。と、不満でも喜びでもなんでもなく、ただ、口に出しただけ。





シューレが、武国や農国がある大陸を活かし見守っているように、


プチビーレの食堂(居酒屋)の主であった精霊フィジニ・ラーキ

彼は、この西の大陸を見守る大精霊になろうとしている。


あの食堂の跡には、でっかい木が一本立っているだけだ。樹齢数百年、千年もあろうかというほどの。

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