第161話 後後36 南部東領縦断


今いる南部は東と西の2つの領にわかれている。

ひとつひとつは広い。でも耕作できる面積はそれほど多くはないという。荒れ地が多いそうだ。

丁度両領地の腹の部分に荒れ地ベルトが広がっているといった感じだそうな。北と南の部分には緑が広がる。その北側には山が連なる。


今通っているところも、道の両側に荒れ地が広がっている。この荒れ地は単純に川が無くなってしまったからだと言われている。

海岸地方は雨がそこそこ降るので緑は目立った。が、そこから半日ほど馬車で走ると荒れ地になった。

もともと粘土質で水も溜まりにくく、あまり使いようがない、と。

粘土は、焼き物やレンガくらいしか使いようがないだろう。森が無いのと日中は日が照るのとほとんど雨がないので、焼く必要がない日干しレンガでいんじゃないかな。粘土で形作って並べて数日放置のみでOKだ。

放置は乾燥し切るまで。



「下流域なのに粘土質ってのも凄いですね」俺

「そうなのか?知らんわ」泉さん

「普通、下流は川が氾濫したりで肥沃な土が溜まりやすいんですよね」

「粘土質がもともとで、ここらにあった川の氾濫が多かったんで、粘土層の上にあった土は皆流されちゃったんじゃないか?」

「ああ、それで川に堆積ひどく、氾濫毎に川が粘土質のところを避けて他に出口を求めるようになり、少しずつ他に流れが行ってしまった、とかですかねー。なんか勿体無い、、」

そう、百姓は良い土をもったいながるんだよ。簡単に作れないからな。

化学肥料なんか糞だ。堆肥まいてもやっぱ枯れた土には不足だし。腐葉土系がマシかな。んだったら氾濫でもたらされた土のほうがいいんじゃなかろうか?もっといろいろ入っていそう。

うちの山の土なんか天然の本物の腐葉土ですごかったもんなー。



ただ、道は、港街の東武商会の支配人が言っていたように、整備されていた。なので、この今乗っている馬車は結構な速度で走っている。さほど揺れもせずに。


「もうウチの馬車が広まってるんですかね?」

この馬車にサスペンションがついている。

「おう、、技術が広まったか、小館の馬車なのかわからんが、やっと乗り心地の良い馬車になってよかったわ」

この分なら、倍はいかずとも、それに近いくらいの距離を稼げそうだ。今までの中間の宿場など、どうなるんだろう?


って、昼飯の場所がその宿場だった。

その小さな街は、見た目はたいして寂れていない。

商人の馬車はいままでとそう変わらずここい泊まるし、駅馬車の客だけが昼飯食べてくれるだけになっただけ。

だそうだ。

そうだな。長距離運搬だけならともかくも、商人だったら村々に寄るので、かわらんか。と泉さん。


「向こうじゃ気が付かなかったが、そばも味が違うな」

え?と思い、食べると

「あ、ほんとだ。汁も違うしそば自体も違いますね、、」港町では刺し身ばかり気にしてたからな!

外国のと武国のと、どっちが美味いか?と言われると困るが、武国の方が日本のそれと同じ。

諸国郡や日のいずる国や農国のは似た感じで、もっとなんか味があるというか、、

武国のが魚系(かつぶしとか)のダシでわかりやすくさっぱりっぽく、他のが魚ではない?のがダシというかベースになっているのかな?ブイヨンみたいにいろいろなー的ななんかっぽかったかなー?


「これは、懐かしい味っすね」

「おう」

で、七味いれたり。更にネギいれてもらったり。ネギも向こうと違う。向こうはわけぎみたいな細い奴がほとんどだった。

どっちもどっちでいいが、歯ごたえはこっち武国のほうにあるので、どっちが好きかといえば、こっちだな。口臭くなるけどw




夕方。

南部東領の1/3ほど来た所で泊まり。

「予定では、ここのあと2泊すれば東武に入れますぜ」と御者。


停車場近くの宿に泊まる。どうせケーキ屋とか無いんだ、滞在することはないだろう、と泉さんが言ったので。


「おお!畳!!」部屋のふすまをあけて中を見た泉さん。

古くなってる畳なんで匂いさほど無いけど、畳だ!


「おや?お客さん外国からですか?」

廊下を通りがかった人が。


「ええ、やっと帰ってきました。畳だけはなかったですねぇ」俺

「作るの面倒ですからね。しかも向こうはほぼベッドだし。」

「おや、外国に行かれたんですか?」

「ええ、少し前にこっちに帰郷して、またこれから向こうに戻るところです」

と、よくみると、中年男性。

「もしかしたら向こうで結婚された?」

「あっはっは!多いですからね!」

「ええ、でもその気持ちはわかりますよ」

「でしょう?食い物美味いし。種類が多い」

「でしたねぇ、、もっと手軽に行き来でいればいんですけどねー」

「ほんっとにそうですね」


その客と別れ、部屋に入ると泉さんは畳でごろついていた。

その気持ちはわかるw


「風呂行きましょう」

「おう、ここの街の風呂はどうだろうか?」



さほど大きくない通りを歩き、眺めながら少し歩くと風呂屋は見つかった。

極普通。どこにでもあるような風呂や。でも柚香か小ぶりのミカンか、を浮かべてくれていた。

冬だからな。


もう荒れ地は抜け、緑地の端あたりにこの街はある。

なので、夜は荒れ地の寒さがここまで届くようで少し寒い。だからこれを浮かべているだろう。

もう少しで春。

あ、春まで待って帰ればよかったかなぁ、、



外の縁台で待つと、いつものようにオバハンと一緒に出てくる泉さん。

おばはんに礼を言って、食堂を探しにぶらぶら歩く。


小さいが良さげな食堂発見。見た目普通の目立たない食堂だが、なんかうまいんじゃないか?と俺達センサーが訴える!

「ガク、あの小さなとこ、入ってみるか?」

「いいですね。入りましょう!」


客はさほど多くはない。あれ?夕飯時間だよね?

だが

「あんだこれ?美味いじゃないか?どうよ?」泉さん、喋り方。

どれどれ、、

「あ、、れ?、、どっかで食ったような食わないような、、あ、、

「「フィジニ!!!」」


料理人と話をさせてもらった。

昔、日のいずる国から来たおっさんに、料理をいろいろ教えてもらったことがあるという。なんでもそのおっさん、料理の修行の旅の途中だったということだ。

「フィジ二が数カ月消えたときか?」

「こんなとこまで来てたんですねぇ」


で、ここの料理人におしえたら「国に帰る」っていっちゃったという。

名はグレートタクラマカングリュンデルワルトエカテリーナと名乗っていた。

そんな名を使うのは、なにかとんでもない理由があるのだろうと、何も訊けなかった。


でも

「ないよな?」泉さん

「ええ、全く皆無ですね!」

ねーよw


「あ、んじゃ、この街にケーキ屋あるか?」泉さん

「あ、ありますよ、今じゃ注文されてからじゃなきゃ作らないけど。武国人は和菓子派ですからね、無理ですよー」

「ところがだな?!」泉さん

「ええ!」


そのケーキ屋というか場所を聞いた。

でも、ここのフィジニ風料理を堪能するのが先!と。

食う食う食う!!!


で、腹いっぱいになって、腹ごなしがてらに歩いて、遠回りしてその聞いた場所に向かうことにした。


会計終えて、、「ちなみに、武国に来て何年くらいですか?」と訊く。

「え?私は武国生まれで、この村のそばの村で生まれましたよ。国から出たことナイですね。」

うまかったと礼を言って外に出る。


「んじゃ、ケーキだな!!」

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