第140話 後後15 武国人達の小さな村


駅馬車ではない、ということは、出立の時間は自分で決められるということ。

なので、だらしないと、

こーなる、、、


「泉さん、行きますよ!」

「いや、、もう一泊すればいーだろー」

布団の中でもぞもぞする泉さん。


いや、俺がこうなるんじゃないかな?って自分を危惧していたんだけど、、泉さんのほうがウワテだったわー、これはわからんかった、、

今まで馬車以外は歩きだったんで、やはり早めにでないとという意識があったんだろうな、こういうことはなかった。

泉さんにとって馬は馬車よりよほど早いという意識があるんで、こーなってしまったんだろう、、


まぁ、ここいらからもう南は雪が積もらない地帯らしいので、冬でも動きに支障ないんで、少しくらい良いけど。


「村の皆はもう働いていますよ!!」

「うそつけー、したでごろごろしている気配するぞー」


へ?

部屋の戸を開けて階下をのぞくと、、マグロが何匹も転がっていた。

食堂が締まってからここで飲み直したのがまずかったんだよなあ、、

宿の親父も面白がって、結局一階の食堂再開して肴とか出してたし、、


「んじゃ、今晩は遅くまではダメですからね!俺が寝ると言ったら素直に寝てくださいね!!」

「あーわかったわかったわかったから寝かせてくれ、、、」



なので、階下に行ってみると、、宿のおやじもマグロになってたんで、朝食は望めない。

なので食堂に行こう。


向こうで言うと7時か8時頃だろう。マグロになっている者達を除いて、ほぼ畑に出たのだろう、おっさん連中は見ない。井戸端で洗濯しているオバハン達のみだ。


食堂に、当然客はいなかったが開いていたので助かった。

「来ると思ったから一応ね、開けといた」と店主。

「え、すみません、助かりました。」


「あっはっは、あの連中、珍しく楽しんでたからねぇ、、客なんてめったに無いし、楽しめる客なんてそれこそ数年ぶりかもなあ」

「ああ、んじゃ、よかったです」


焼き魚と漬物、味噌汁とごはん。もろ和食じゃん、、、、

「あの、、ここの人って、だいたいお米を食べるんですか?」


「あ、珍しいかい?」

「そうですねー、俺の国だとこういう食事なんですけど、、こっちだとあまり見なかったですね」


「そうだなぁ、、あまり村を出ないんで気にしなかったけど、、、王都だと、そうだな、、あまり米の飯みないよなあ、、」

「味噌汁も。」

「ああ、だな、、他でみたことないなー、」


「ここのひとって、武国出身なんですか?」

「あー、どうだろう?気がついたときにはここだったからなぁ、、」

のんびりか、、、


切り口変えてみる

「武芸とか好きですか?」

「んー、、できるっちゃーできるけど、、好きかって訊かれりゃ、、好きってわけでもねーなー」


「俺と同じな系統かな?武国人だけど、あまり切った張ったは好きじゃないんですよね俺。なのでどっちかというとこっちや農国の方がおもしろいんで、、」

「あー、そうかもなー、、んじゃ、、俺の親たちは武国から来てここに住み着いたのかもな、、つーか、、この村全体w」

「全戸っすか、、」

「あー、皆だ。皆闘うことができるけど好きじゃないし、飯はこういうのが好きだし、、多分一緒にきたんだろ。皆、なぜか刀だけは持ってるぜ?」

団体さんで移住したんだな絶対w


プチビーレで干し柿見たので、保存食として持ってた。飯を食い終わった後、宿に戻って干し柿とってきた。

「これ食べたことあります?」

「おお、干し柿だな、、懐かしいなぁ、、、ここいらには柿の木無いからなぁ、、」

「プチビーレでたまたま見つけて買っていたんです、食べてください」

「おう、、なんかわるいな、、でも遠慮なくもらうわ、、ありがとうな!!」


本当に嬉しそうだ。こんなによろこで貰えるとは干し柿冥利に尽きるんじゃないだろうか干し柿としてはw

武国では珍しくもないおかしな干し柿。



その後、村や周囲を散策。

とても綺麗に手を入れられている村だ。

古くてぼろいところもあるが、修繕され、隅々まで目を掛け手を掛けているのがわかる。

外に向ける目をうちに向け、それがほぼ全部良い方に行った例だろう。

大切に使ってるんだな、というのがよくわかる。


とても地味だが、、今まで見てきた街や村の中でダントツだな。小館も敵わない。




昼には泉さんも起きたので、また食堂に行く。

武国らしい食事に喜んでいたが、ケーキは無いと言われてしょげていた。

飯食えるだけでもラッキーなのに、しかも故郷の飯食えたのに!

といっても、口はまだ子供の部分が強いんだろう、、


店主がいもで茶巾絞りを作ってくれた。

番茶で食べると、素朴な味がとてもうまかった。

泉さんも和菓子(武国菓子)を見直したようだ。

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