第139話 後後14 東沿岸に向かう


駅馬車が路線廃止になるけあって、寂れた街道だ。ほぼ真っすぐに東の沿岸に出る街道。


並足で馬を進めていると、左右には手入れされた農地が広がる。この辺はまだ王都の台所といったところなのだろう。



まだ夕方になっていないが、村に寄った。泊まるところが有れば泊まる。なければ先に進む。食事だけはしていこう、と。


幸い宿はあった。開店休業中といったところらしく、「客が来たら開けるだよ」と笑いながら説明する本業農夫で副業に宿をやっているというおやじ。


親父が開けた扉の中は埃っぽかった。

一階の食堂の3方の窓をおやじが開けると、外光に舞っているほこりが見え、思わず息を止めてしまうほど。


・・・

「おっちゃん、、この村に食堂ある?」

「おお、あるど、一軒だけだけど、うまいんじゃないかの?、俺らぁにはもっぱら酒のむ店ってなってんだけんどな。」

まぁいいか、、

「んじゃ、食事はそこでするわ、、このホコリの中では、、ちょっとなー」

「あっはっは!そんだよなー、、俺もそのほうが楽だしぃ、、、素泊りな、今寝具持ってくるから、、」

と、おっさんは出ていった。


「かなり、寂れちゃってんだなぁ、、」泉さん

「ええ、海のほうは漁港とか少しは期待したんだけど、、」

「ねーよな、多分、、」


でも、、

「昔は宿を作るほど人が行き来していた、ってこのなんだろうけど、、」

・・


寝具を持ってきたおっちゃに部屋を案内されたときについでのように訊いた。


「ああ、魚がとれなくなっちまってな。」

ごく当たり前の答えだった。


海の地形が変わる、海流が変わる、海底火山とか噴火する、地上の気候が変わり海も変化する、、など、

局地的に魚が激減するなどの変化はめったにはないだろうけど、あるにはあるし、あったらこのように位置地域が壊滅になるようなことだ。


魚が増えるのは良いが、居なくなると悲劇だな、と。

俺らはそれについちゃ、何も言えなかった。


この先の東の海の向こうは誰も知らない。陸地があるのか無いのか。

なので、この大陸の東側の港は、主に漁港だったようだ。というかもっと小規模な漁師町。

こっち側には大きな船もないので、沿岸路線とかできてないという。陸路で行くほうがよほど安全だ。なので船は漁船のみ。

そして、この東の海を越えてみようという無謀な者はまだでていない、とのこと。



そういうことを泉さんも今まで、ここ含めていろいろ聞いたから知っている。

「まぁ、、海を見てから、その後のことを考えよう」と泉さん。


外に出て食堂はすぐにみつかった。

小さな村だ。


食堂の客は皆村の者。

ほとんど外部からこないからめずらしいと言われた。

たまに商人が来るていどだという。

特別に必要なら王都に出てしまうらしい。村から買い出し部隊を出すという。

王都までの距離が近いから、この村のものはそう難儀に感じていない様子は、のんきに見えて良いものだ。

通常は、野菜など村の収穫物をまとめて市場に売りに行くという。

小物はその帰りに買ってくるらしい。


「ちょうどいい距離なんだな」泉さん


「ああー、そう言われりゃそーだな?」客A

「ああそうだなぁ、、うるさくなくって、めんどくさくなくって、、丁度いいんだなぁ、このくらいが、、」客B

「でも、客のメンツが変わらんからつまらんなw」店主

「あ、何いってやんでぇ、、楽でいいじゃねーか!」

あっはっはっはっは!!


気の良い連中だ。街に出るから、外部の者とのやりとりも慣れてて自然にできる。閉鎖的になっていないんだな。

でっかい都会に在っても、学校とか閉鎖的だったからなぁ、、


「この先に村はあるのか?」と泉さんは訊く


「・・・・あったか?」

「・・・奥から誰か来るのは、あまり見ないなぁ、、」

「うん、、一日程度の距離には無いと思うぞ」

など、皆、無いんじゃない的な返答だった。


飯はまぁまぁ、、酒がそこそこうまいのを置いていた。

客達と遅くまで飲んだ。村の連中は、めったに来ない客を喜んでくれたのだ。

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