第60話 中−26 ケーキ!ケーキ!と北山残党


「はい?」

「よろしければ、、武国のどちらから、」

「東武領です。そこから西に出て北山領を経てラスタフに入り、今はここです」

「ああ!、、北山、北山領はどうなりましたか?!!」

泉さんを見る、泉さんは頷いて俺を促す。

「北山領主一族は、武国反逆で取り潰し。そこに居た西の国の者たちは、全員討伐されたか捕縛されています。

今は将軍様直属部隊が駐留し、治安回復しています。」

・・・・・

おばさんは目に涙をうるませる

「はぁ、、やっと、帰れる、、。

私達は北山領主に強制され鉱山に精製施設をつくらさせることになってたのです、でも、どうにか逃げることができた。でもラスタフにまで追手が来ました。なのでここまで逃げてきたのです。」

「ほう、お主たちのおかげで、というのもあるな、、西の奴らを討伐できたのは」泉さん

「奴ら、精製したものを西の国に持って帰りたがっていた。ただの鉱石と精製されたものでは積める量が違うだろう? 鉱山開発すらろくすっぽ専門家がいない状態だったので遅々としていたようだ。

おまえら専門家が逃げてくれたおかげで、わしらが奴らに気づき、叩きつぶせた。

ここまで道中たいへんであったな。ごくろうだった。今日からは安心して休め。」

「う、うううう、うえーーん、、、」

おばはんは、やっぱり大変だったんだな、

その苦労を認め、労った泉さんは、見事な”上の者”だな。



その後、その婦人の滞在先に行き、逃げてきた皆と合流。

俺と泉さんもそこに移った。その晩、北山のことを事細かに話、彼らにもいろいろ訊いた。

お互いに信用できたようだった。




数日後、駐在武官邸に行った。

「よう、なんかあったか?」

出てきた副官にフランクに訊く泉さん。

「ああ、泉さま、まだ何も返事は来ていませんが、、」

「そうか、、で、、ここには、何か武国国内のこと、届いているか?」

「・・・そうですね、お話して良いこと、は、何も、、」

「うむ、わかった。で、武官殿は今居ると聞いたが、、」

「はぁ、ですが、今少し手が離せなく、、いつになったら時間があくのか、まだ不明です」

「そうか、、そうそう、、

おまえ、聞いているか?

北山領のこと。」

「・・・はい、でもお話して良いことがどうか、武官殿に確認とらねばならないことなので、、」

「うむ、では俺が話してやろう。

西の国のから北山に侵略してきた全軍は壊滅した」

「・・・」

「で、北山領主も反逆でその場で討伐された。」

「・・・・」

「討伐したのは、俺だ」

「・・・」

「捕縛した後、その場で首を刎ねた」

「・・・・・・・・」

「北山領内の、反逆に加担した者たちは、全て捕らえられ、処刑された。」

「・・・」

「勿論、北山領外や武国国外にいる者には、今追手がかかっている」

「・・・」

「全員かならず捕まえると、将軍はおっしゃっている。

だがな、俺はその前に国を出てしまっているので、国外に逃れている奴らをまだ知らん、

知ってれば旅のついでに首を跳ねまくるのになぁ、はははははははっ!!!

それが俺の仕事のひとつでもあるからなっ!!」

「・・・・・、そうですか。連絡が届いたら、お知らせします。ですが、、いかんせん、、こちらの王都まで2日ほどで行きますが、そこから武国王都まで何日かかるか、、な、程ですので、往復となると、かなり日数を見ていただいきたいです。」

「おう、わかった。また来る」



・・・・・

「いずみさん、」

「ああ、やつは鳥人たちが手紙を運んでいることを知らなかった。ここ1年も前からこの農国王都までも、2,3日に一度来ているのだ。最近、農国を気に入る武国人は少なくなく、逆もまた少なくないとのことで、、、いろいろ遣り取りしとるんだと、我が将軍様は。だからおまえの暖房が取引材料になると言ったんだ。」

「はぁ、、」

「で、

多分、推測だがな?やつは返事を受け取っている。そして、それよりも前に、北山領と西の国の部隊壊滅のことを知っているし、それを多分、武官に隠しているのかなぁ、もしくは武官と一蓮托生なのか、、あの感じでは前者だな。

ただ、武官も馬鹿じゃないとは思いたいんだがなぁ、、他国に派遣されるほどなのだから、、」

「どうします?」

「様子見だ、、2,3日したらまた行ってみよう、でもいないんじゃないかなー、逃げるだろ?あれだけ脅したら」

「ああ、なるほど、、

捕まえてもいいけど、時間かかるし面倒になるし、もし我々の宿とか襲われて彼らにも及んだら、、逃がすほうが安全だ、ということですね?」

「うむそうだ。、、更に言えば、、まぁ、ここ以外じゃ武国人なんか目立つだろ?で農国にも捕縛を依頼すりゃ、そうはかからないんじゃないか?」


「なるほどねぇ、、おそれいりました!!ケーキ効果っすかね?」

「なんじゃそれ?」

「糖分、さとうとかの甘い成分が、脳の働きを良くするらしいんです」

「ほう、んじゃ、ケーキはなるべく多く食う方がいいんじゃな?よし!行こう!!」

うっぷ、、、

「言ったじゃないですか!何度も!!」

「う、、いや、、出さんから、、だいじょぶ、、」


あれから調子に乗った泉さんは喫茶店を梯子した。まぁいろんなのがあるわあるわ、店の自家製なんだなあれらって、、、で、どんどん試す!

幾つかは口に合わずに俺が食べたけど、、、一体幾つ食ったんだか、というほど。



その晩、晩飯時間になっても泉さんは満腹のまま。

そうだよなぁ、、甘いものは空腹を満たす働きもある、とかだったよなー。

他の皆は泉さんが子供だから心配していたけど、

「調子に乗ってケーキを食いすぎただけです」

と教えたら、気にしなくなった。



3日後、武官邸に行った。

副官が一昨日朝から来ていないとのこと。

その日は武官に直接会えた。


泉さんは武官に時間をとってもらい、じっくり話した。

武官は副官を「なんかおかしいなぁ」とは思って少し気をつけていたらしいのだが、さすが公文書を勝手に見たり、隠匿したりまでするとは思わなかった、と泉さんに謝罪していた。


泉さんも、

「武官殿が北山側でなくってよかった。あの場で北山領主の首を刎ねたのはわしなのでな。」


その戦での最高首を取るのは、その最大の功労者の特権。

武官は、武国王都からの幾つかの手紙を先に読み終えていたので、北山領主と西の国の部隊のことは知っていたが、それをやったのがこの眼の前にいるとは思わなかったらしい。

そりゃそうだ、唯の旅人。しかも目の前のソレは、まだ幼い女の子だ。

ただ、、自然にしてても隙きはどこにも見えない女の子だが。




武国王都からの手紙は2通あった。

将軍からのは、いくつもの解決大儀であった。ということ。

あとひとつは、福田さんから。

福田さんは先を読んでいた。

この手紙がまともに届くか不明だ。まず最初に、あの推測、こちらでも検討していた。だからその方向で、予定通り進める。我が国のゴミが目に付いたら遠慮なくその場で排除願います。みたいなことだった。

他人に読まれてしまうことを前提にして書いてあったので、ここの武官の副官はこれを読んでさぞ焦ったことだろう。しかも泉さんのあの脅しだ。すぐさま逃げる算段をしたのは当然だろう。


武官は、逃げてきた北山領の技術者たちをまず武国王都に送り将軍様にねぎらってもらうのがいいと、手紙を出した。

そして、馬車を調達し、農国王都の駐在武官に届け、そこから武国王とまで届けてもらおうと。

泉さんも乗っていくかと訊かれたが、「俺らは旅人だからなー」と今回は遠慮した。


ここから農国王都まで早馬で2日だが、駅馬車だと4−5日かかる。途中下車もするかもしれない。直行はもったいないだろう。



と、思ってたら、、、

それから泉さんは毎日喫茶店やケーキ屋めぐりの毎日だった。

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