第48話 中−14 出立 「さあ!僕達の旅の始まりだー!!」 打ち切らない!!


準備は整った。

で、

どんな準備をしたの?

というと、、



地図、

行き先(とりあえず)、周るところ。

期間(だいたい)

連絡方法


泉さんと話し合った結果、装備品よりも重要なのは計画だということいになったわけだ。

で、

足慣らしとして、最初は国内を周り、雪解けと共に北に上っていく。

大国農国の王都には武国の駐在官がいる。そこに寄り其れまでの足跡と気付いたことやらの報告を出し、東武領主に送ってもらう。


秋まで農国を東に向かい、秋になったら早めに南に下る。いきなり冬にはいるだろうから降雪にあわないように下る。雪が浅い地域まできたら、そこで少々滞在。その後東に向かう。


その後は、東の海に当たるまで進むつもりだが、あまりに遠かったら南の小国群に向かい、西に戻ってくる。海側から武国に入る。


各国ではなるべく首都に向かい、武国駐在官がいるところは報告を残し、いないところはなるべく商人などに手紙を託せる者がいれば託す。


銭は国によって違うので、なるべく貴金属で持っていく。尽きる前に稼ぎながら進む。

ひとところに長く滞在する時は、可能なら武国まで便りを出す。


「ま、こんなところだろう、、

で、装備は軽いほうがいい。」


泉さんと俺は、攻国に行った時の装備をそのまま。

泉さんは二本刺しはやめて脇差しのみ。俺は小太刀というか小刀、刃渡り15センチほどのナイフのみ。

軟膏、丸薬、乾燥食料、水袋、酒少し、

マント、カサ(かぶる方)、衣料着替え一式、

手ぬぐい等小物類。

必要なら中古で揃え、要らなければ売るなりで処分。


旅程は東武領周囲近辺は熊が詳しい。なので、よく聞いて地図に書き込みをした。



許可は降りた。



ーーーーー


里心が付くと困るので大々的な見送りなど断った。

領主様と泉さんが小館に来て、小館からの出発となった。

そのまま西に歩き出す。

上村を越し、峠越えをし、向こう側の隣の領地に入る。ここらへんまでは熊の話しを聞いていたので楽だろう。



「ひー、、ひー、、いずみさーん、、ちょ、ちょっと休けーしまそー、、もうだめー」

・・・・・・

無視されること数回、

歩きだしてから半日でやっと足を止める泉さん。


乾燥飯、乾燥肉、乾燥野菜を食いながら水を飲みながら、足を揉む俺。

鬼だ、泉さんは鬼の娘だ!


「おまえなぁ、、一人だったら一日でちっとも進まんかったぞ?子供でさえも日に5里は行けるんだぞ?」

、、、20キロ?まさかぁ?

「なんだ?疑ってるのか?んじゃ次の村で聞いてみようなー、」

え、まじ?まじに子供でも?

「で、でも、俺文明人だし、、」

「ナン年こっちにいるんだよ、もうこっちの人間になってるじゃねーか、おまえ、体を鍛えるのが嫌いなだけだろう?」

・・・すきではない、、、

「・・・もしかしたら、歩き方がアレなのかもなぁ」


今度は泉さんに歩き方を教えてもらいながら進む

「おら!また足で歩いているぞ!」

ああ!

叱られながら教えてもらったケツ筋肉で歩く方法で歩く。

確かに足は楽だ、、なんかほとんどつかっていないケツの内部の筋肉?腰の方の筋肉?痛になりそう、、

「大丈夫だ、そこは筋肉痛になりにくいから」

まじかー?


山を挟んでちょうど上村の逆側あたりの裏上村で一泊。上村での温泉開発の話を聞いて、ここでも領主様にお願いして温泉を掘ったとのこと。勿論湧いた。

筋肉疲れにちょうどよく、、

うまい飯くったら、、爆睡数秒前だなこりゃ、、、




「学、早く起きろ、馬車に間に合わなくなるぞ!」

ガバッ!!

「え!馬車あるんすかっ!!!」

「うむ、領都方面への駅馬車があるそうだ。週に2本程度しかないので乗り遅れたら歩きだぞ?」

どたばた!どたばた!

速攻で着替えて荷物をまとめ、下に降りて朝飯食って駅(と言っても門前の広場)に急ぐ。

席が無かったので空いていた屋根の上の荷台に。季節がいいし、天気もいいので屋根の上は気持ちよくぐーすか寝られる。


2晩かかり領都から2つ手前の町で下車。

ここから領都へは東に進む。俺らはそのまま北に行くので枝街道に入る。

不定期馬車があればそれ、商人などの荷馬車がいれば乗せてもらう交渉をするのが基本だ、と泉さん。

客馬車は2日後に出るという話を宿で聞いた。

悩む泉さん。

商業組合で北に向かう馬車はないかと訊くと、

「たぶん、**商会の馬車がもうそろそろ出るんじゃないかな?」と。

訊きに行くと「明日出立」。用心棒してくれるんなら乗ってもよいとのこと。

客馬車なら人が多いので武国なら使い手は必ずいる。が、荷馬車は御者と、使用人がいるかいないか程度なのだ。

商談成立。

3晩4日かけて真北の大きな街に行くとのことだった。月に1−2回は往復しているとのこと。ツイていた。


流石に表街道と違い、人通りはほぼ無い。

「これじゃ少しは用心棒ほしいわけだな。」

「山賊とかほぼいないとか聞いてたんスけど、、」

「東武領は、まずいない。外から流れてくる者達でも仕事くらい有るからな。悪党は即討伐されるし。

しかし、他の領はどうだか、、、」

「、、ははぁ、そう言われれば東武領ってバーサーカー資質の者達ばかりって、、、強さもだんとつ武国一だと、、、」

「まぁそのバーサーカーとやらが何を言うのか知らんし聞かないけど、、そういうことだなー」



昼に半時ほど休憩し、各々昼食をとる。丁度小さな村の入り口で、茶店が出ている。

こういう時代だから、人通りの少ない枝街道でものんびり商売できるのだろう。畑仕事をやりながらの現金収入のための茶店、だ。衣食住は自給できる、何かのときのための小金を溜める、というためだけの茶店商売。年寄りにやらせておけばいい。

泉も学も、そういったガツガツしていないこの世界が好きだった。


古ぼけて修繕跡がそこここに見える茶店だが、清潔にされている。店の中で蕎麦をすすり、冷酒を飲む。

ほどなく出発。




はらがこなれてきた頃、馬車が止まった。何もない場所。

「か、金を出せ、、、」


ばらばらばら、と、5−6人の貧相な者達が小刀?包丁?を持って、、

あきらかにびびっている、


「チッ」舌打ちする泉さん

ぎぃ、、ぎぃ、、

タン、タン、 俺も一緒に荷台から降りた。見た目大丈夫そうなのでw。


「おい、おまえら、食うに困っての物盗りだな?

初めてだろう?

農民か?木こりか?仕事は何やっていた?」


「お、おめぇーにそんなこと答えるギリねーだ、、」

「いや、まて、、おらたちは農民だ、年貢が払えなくて逃散しただ、、、」

「なぜ払えなかった?」

「急に男どもを雑役に駆り出され、収穫に間に合わんかっただ、、コメも野菜も大半がだめになった」


(こりゃ、村を潰したかったんだろうなぁ、どこの領主だ?)

「どこの領だ?ここらじゃないな?」

「ああ、北の山2つ越したとこの北山領だ。北村、おら達の村だった。今は誰も居ないはずだ。」


泉さんは懐から銭袋出し、少し考えてから幾らかをそこから出して、そして懐から筆を出しちょいと舐めて湿らせ、懐紙にすらすら、と何かを書く。

「ほれ、ここから南に進めば裏上村という村に着く、そこから東の山を越せば上村に出る。その先に小館村がある。そこの村長に渡せ。おまえらがまともな農民になりたいのであれば、領主様は受け入れてくれるだろう。

だが、騙すなよ?世界一恐ろしい東武領の領軍が駐在しているんだからな?」


びびりながらも手紙を受け取って、銭も受け取った。小館まで位なら皆で毎日3食は食えるくらいは優にある。

東武領も小館も、ベテラン農民はほしかった。



夕刻の野営まで、それからは何もなかった。


商隊での野営は初めてだ。

商人だから結構良い野営なのかな?とか思ったが、俺達と変わらない。湯を沸かし、保存食を食べ、湯か薄いスープを作って飲むだけ。寝るのは荷台か御者台に横になる。


泉さんは気配に敏感なので、「全員眠っても大丈夫」だという。ので、見張りはたてず。




朝起きたら狼が3頭切られていた。

「夜中に襲ってきてなー」と、何でも無いように言う泉さん。

バーサーカー達にとっては普通以下程度ということだろうなぁ、、


狼の毛皮をはいで持っていく。

「そこそこの金になる」とのこと。

うちの人狼たちのモフ度にくらべりゃ哀れになるほどがさがさだ。




それから3日後、何事もなく到着。

北山領ゴラーテ。

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