第七章 4

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「そうなんだ」

「はい。琉球には、秘密めいたものは、ありません」

「双方向テレビですので、仮名・年齢・性別・職業・地域名をしるして、今、討論されていることに、賛成か。反対を投票することができます。リアルタイムで、政治に参加できるんです。その票数は、刻々と、テレビ画面に表示されていきます」

「それは、凄く民主的な議会だなあ」

「はい。琉球は、全員参加の政治を、目指しているのです。ですから、働いていても、張り合いがあります」

「民意が、ダイレクトに反映されているんです」

「ですからいまの大統領も、内閣も、国家も国民に支持されています。大統領も、大臣も、国会議員も、みんな、公務に支障をきたさない範囲で、きちんと、職業を持っています。私的な、会社を経営することは、許されません。ですから、医師、弁護士、弁理士、農業、漁業、教師、研究者、建築士と色々です。また、その職業で得た知識が、政治に生かされているんです。大統領も、議員の人々の報酬も気の毒なくらい少ないのです。政治家として必要な費用は、無制限に国から支給されますが、費用は、審査を通らなければ、支給されません。さらに、最小単位の金額の領収書を公開しています」

 レストランの、ウエイターまでが、国の政治の仕組みを熟知していた。

「凄い国だな」

 白井は、お世辞でなく、そういった。

「この国には、パーティー(政党)というのは、ありません。個人の資格で、選挙に、立候補します。ですから、政党を維持する経費も、計上されません。国営企業が多いですから、汚職も発生しません。国営企業は、公社になっていきます。いずれ、力がつけば、私企業になっていくでしょう。タクシーに乗られましたか?」

「ええ」

「タクシーはすべて、個人タクシーです。会社にすると、間接費用が掛かります。その分、運賃に上乗せされます。それを、避けているのです」

「徹底しているなあ」

「少しでも、廉価に、観光楽しんでもらいたいと言う、琉球共和国の国民の願いなんです。そうすれば、お客様は、必ず、もう一度来て下さいますから」

「立派な心がけだなあ」

「観光は、琉球共和国の、大切な、産業の柱でございますから」

 とウエイターが、微笑んだ。

(国民の一人ひとりを、ここまで教育するのは、容易なことではない。それを、短期間で、完全にやる気にさせている。海賊だという、Rグループでは、到底、出来ないだろう。ということは、Rグループは、琉球には関係がないのかもしれない)

 と白井は思った。

 翌日船をチャーターして、尖閣諸島方面に行ってみた。

 かなりの沖に出てみて、白井は、意外なものを目撃した。

 艦船を十隻ほど使った、浮島を見たのであった。

すべて航空母艦で造ってあった。

「あれは、何なのだ?」

 と、案内人に訊いた。

「軍艦島ですよ」

「軍艦島?」

「そうです。琉球共和国の防衛基地です」

「大砲も、機関銃も、ミサイルも・・・」

「実際に使えますよ。各艦船からは、高速小型艇も、無数に出てきますし、ジェット戦闘機も、ジェットヘリも甲板から飛び立ちます。この軍艦島1つで、東シナ海は防衛されているんです」

「・・・」

 白井は琉球共和国の秘密を見た気がした。

「確かに、この軍艦島は、物凄い要塞だ。全方位に向かって、すべての、武器が睨みを利かせている。しかも、各方位にジェット戦闘機が、常に発進出来るようになっている」

「船の中には、物凄い数の海兵隊が、住んでいます。足の長い、輸送機もありますから、どこにでも、戦車や、装甲車、自走砲を積んで出撃出来ます。 バリアーも、あらゆる電波を補足出来ます。あのアンテナ群は生きているんですよ。尖閣諸島、琉球本島、八重山諸島に少しでも、変化があれば、偵察機が発進します。P3Cが出て、潜水艦の位置も捕獲します。すかさず、高速水雷艇が、軍艦島から、数隻出撃します。軍艦島は、年内に、琉球本島の北方と、南シナ海にも改良させて、出来るはずです。海南島と、パラワン島、それに、各アセアン各国からの要請によるものです。

 アメリカのグァム、サイパンの基地と常に連絡を取っているようです。 それ以外に、空母艦隊が三隊、つねに、巡航しています。カムチャッカ半島から、南洋までをカバーしています。日本の海上自衛隊、韓国の海軍とも連携しています。三国は、東アジア共和国でもありますからね」

「そういうことか・・・立派な、防衛網が出来ているということだな・・・」

「平和には、高いコストが掛かります。中国や、ロシアと言う国は、不気味な国です。いつ、息を吹き返すか判りません。こちらが、弱みを見せたら、直ぐに牙を剥いてきます」

「今は、死んだふりを、しているということか・・・」

「そう思って、間違いないでしょう。困ったことに、日本は、平和ボケをしています。危機感がありません。韓国とは、まるで、違うのです。琉球ともね。切羽つまっていないのだと思いますよ」

「Rグループというのは?」

「え?・・・お客さん、よくご存じですね」

「ま、な・・・」

 と白井は、言葉を、濁した。

「で、Rグループというのは?」

「琉球共和国の軍隊の、秘密軍団だというんですがね。噂でしか聞いたことはありません。本当に、いるんだか、単なる噂なんだか。まだ、誰も、一度も見たことはないんですから・・・」

「うーん・・・私は、本当にいると聞いてきたんだが」

 といったときに、ガイドが、

「あ、その、琉球共和国の、最強軍団が来た・・・」

 と八重山諸島の方面を指さした。

 そこに、整然と隊列をなした、空母艦隊が、波を蹴立てて、向かってきた。

「凄い・・・空母を中心に、前後に戦艦、揚陸艦、護衛艦、輸送船、駆逐艦、巡洋艦が、編隊を崩さずに進軍してくる。あんな艦隊と出会ったら、敵は確実に、尻尾を巻いて逃げるぞ」

 白井も、眼を見張った。

「空母は艦載機だけで、七、八十機は乗せているといいます。浮かぶ城です」

「あれが、Rグループなのか?」

「違いますよ。琉球共和国の正規軍です。あの規模の艦隊が、三艦隊あるのです。当然、海兵隊も乗っています。輸送船が何隻ありますか? 輸送船には、戦車、装甲車、自走砲、食料、その他、ありとあらゆるものが積まれています。兵員も、確りと乗っていますよ。給油船のタンカーまでが用意されています。壮観ですね。あの艦隊のお蔭で、琉球共和国は、他国から莫迦にされないでいるんです・・・琉球共和国の誇りですよ」

 とガイドが、胸を張っていった。

「たしかに、あれだけの艦隊が、一斉に、戦闘態勢に入ったら、怖いものはないな」

 と白井も、ため息をつくように言った。

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