第五章 4
世界中の要人たちは、一斉に戦慄した。
手際が、余りにも、見事だったからであった。
何所の国の特殊部隊だか、誰にもわからなかった。
ロシア、中国、北朝鮮は、パニックに陥った。
「犯人が判らない」
これは、どうしようもないことであった。
中国は、講和を求めてきた。チベット、ウイグル、内蒙古、モンゴル、カザフスタン、旧満州の女真族に対してである。
河北、河南、山東、山西、江蘇、チョーチァン、福建、広東、湖北、湖南、シァンシーの十一省以外は、各部族が分捕った。
「それでなければなお攻める」
というので、その時点での、最高責任者が、署名をして、講和を結んだ。
戦闘のあいだも、レアアースは、造りつづけた。
出荷はトンキン湾の海南島経由で続けられるはずであった。
しかし、製品は、海南島に、ストックされたままであった。
日本をはじめとする、各国が欲しがったが、ストックの山が減少することはなかった。
海南島は、すでに、琉球の領土なっていたのである。
琉球国と商談をしなければならなかった。
他の民族たちは、琉球共和国を、宗主国としていたのである。
国土が小さい国を、宗主国として、大きな領土の国を、従えていた例は、沢山ある。
イギリス、オランダ、ポルトガル、ベルギーなどは、みなそうであろう。
不思議なことではなかった。
中国の余りにも、倣岸不遜な態度に、R1号は、危険なものを感じたのである。
日本も、アジアの諸国も、中国に、
「何様の積りだ」
という思いを抱いていたが、中国の国旗を、土足で踏みつけたり、焼き捨てたりはしていない。
(日本の国旗を焼き捨てたりした、画像を流しておいて、そのあとで、謝罪しろだの、賠償を請求する神経が判らない。その連中は、そうしたことのプロであろう。アジテーターのプロなのだ。だったら、本当のプロの技を、見せてやる。あのヒステリーどもが、どれだけ、根性があるのか、見たいものだ)
と、R1号は、危ない国の、リーダーを、次々に、同時に消し去った。
ときを移さずに、カザフスタン、イラン、アフガニスタン、イラク、トルコを動員して、ロシア領に雪崩こませた。
ロシアは混乱していた。
そこに、一気に四方から、攻め込んだのである。
シベリアには、旧満州の女真族、モンゴル、ウイグル、カザフスタン、キルギス、
ウスベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンの中央アジアの国々も、一気に攻め込んでいった。
ウクライナ、やベラルーシは静観したが、タタールスタンや、チェチェンなどの共和国は、日頃の不満が爆発して、モスクワに攻め上っていった。
ロシアが降伏した。
シベリアなどは、モンゴル、ウイグル、カサフスタンに割譲した。
琉球国は、カムチャッカ半島と千島列島、樺太、沿海州を、ロシアに領有の放棄をさせた。
ロシアは、ウラル山脈以西に領土が縮小した。
しかし、元に戻っただけのことである。
ロシア連邦は、カレリア共和国、モルドビア共和国、チュバシ共和国、アリ・エル共和国、タタールスタン共和国、バシコルトスタン共和国、カルムイク共和国、コミ共和国、チェチェン共和国、カバルディノ・バルカル共和国、アジャリア共和国、南オセティア自治州、イングーシ共和国、アゼルバイジャン共和国、ナゴルノ・カラバフ共和国、北オセティア共和国、カラチャイ・チェルケス共和国、ダケスタン共和国、アディゲ共和国、ハンティ・マンシ共和国、ヤマロ・ネツツ自治管区、ハカシア共和国、アルタイ共和国、トゥバ共和国に、分離独立していった。
ウラル山脈以東は、ウイグル、モンゴル、旧満州の女真族、琉球共和国が、占領していった。
ロシアは元の、北方の小国に戻っていった。
世界の趨勢であった。
それは、中国も同じことであった。
さらに、旧満州の女真族軍は、鴨緑江、豆満江を押し渡って、北朝鮮に侵入していった。
韓国国境以北を瞬く間に、占領していった。
接近戦になったら、核も、ミサイルも使えなかった。
「これで、アジアから、危ない国は、消えたな」
とR1号が言った。
「しかし、日本は、本当にだらしのない国になった。なに一つ、自力では、出来ない国になったのを、曝け出したな。レアアースは、悲鳴が上がるまで、一切売るな。他の国にもだ」
とR1号が、厳命した。
北朝鮮では、レアアースの鉱床を、探索して、直ぐに、採掘に入った、モンゴル、カザフスタンでも、採掘に入った。
それらは、尖閣諸島に運ばれた。
貯蔵施設が造られた。
琉球国は、遼東半島と、山東半島を、領有した。
これで、渤海と、黄海を押さえたのも同然になった。
中国では、内乱が、勃発した。
ロシアでも、同じであった。
R1号は、内乱には、手を出さなかった。
他の国々や、民族が、戦列に参加をしたので、Rグループから、戦費を支出することはなかった。
現金化したいときは、海南島と、尖閣諸島から、レアアースを、日本などに売れば良かった。
日本から、
「北方四島は、日本の固有の領土だ」
と言ってきた。
R1号は、鼻の先で笑って、
「何もしないで置いて、権利だけ主張するのか。それなら、レアアースも売らない、といってやれ。ロシアから、割譲された領土だ。なぜ、琉球に渡したのか、ロシアに聞け」
と追い返された。
すでに、琉球共和国に、日本の主だった企業が、移ってきていた。
電動自動車、ITのハード企業、ケータイの生産工場、ソーラー関連、液晶関連といった企業が移って来ていた。
人的資源は、アセアンから、正規社員として、すべての企業に配属されていた。
臨時雇用や、季節雇用は認めなかった。
しかし、平均賃金は、非常に低廉に抑えることが出来た。
レアアースや、石油、鉄鉱、非鉄金属の供給はすべて、琉球で賄えた。
それも、安定供給出来た。
琉球にある、企業には、それらのものを、必要なだけ供給したので、日本の企業が、先を争って、進出移転を希望してきたが、
「琉球共和国は、小さな島国である。既存の企業以外は、厳選する」
と申し渡して、
「中国の遼東半島、山東半島に、移転すること」
を奨励した。
そこに移転した企業には、琉球共和国並みの、資源、人材を提供するとしたので、日本の企業が、雪崩を打って進出移転をした。
さらに、R1号は、次に、北朝鮮に進出移転することを奨励した。
北朝鮮は、盟主国の中国と、ロシアを失って、オロオロしていた。
後継者を失ったショックで、大首領様は、持病を悪化させて、落飾していた。
権力闘争が起きたが、旧満州の女真族軍に鎮圧させて、新しく、自由な体制を作らせたが、仕事がなかった。
そこで、日本の企業に、北朝鮮と、旧満州の中国東北部に、進出移転をすることを奨励した。
石油、鉄、非鉄金属、レアアースと、人的資源を供給した。
日本の企業は、R1号の言う通りに動いた。
それらの、すべての企業に、琉球の証券市場に、上場することを義務づけた。
法人税を日本の倍額納めさせた。
それでも、日本の企業には、メリットがあった。
次に、各企業から、アンケートをとった。
北方領土の四島返還が、望ましいか、その場合には、すべての資源の供給をストップするが、どちらを希望するか?
このアンケートで、各企業は、北方四島の放棄を、答えとして出してきた。
「非国民め」
とR1号は、言葉を吐き捨てた。
「心の奥まで腐っている。日本人は、もうだめだな」
と首を振った。
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