第五章 3
ロシアの大統領が、カムチャッカ半島から、日本の北方四島に来島する報告が入った。
「チャンスだな。一個空母艦隊を、太平洋と、オホーツク海に展開されろ。同時に、モスコワに、ヘリを五機飛ばして、首相のいるところを、確実に掴め。 あの国の、本当の実力者は、首相だ。必ず獲れ。
ファイターが飛んでくるだろうから、こち
らも、カザフから、十機発進させろ。モスクワ近くの町を、爆撃してみろ。指令が出るはずだ。その電波をキャッチすれば、首相の居場所は判る。そこを爆撃しろ。
中国と日本が揉めているときに、横から口を突っ込んで、撹乱作戦に出るなんて、狙撃されても、仕方がないだろう。
全機ステルス仕様だ、低空で襲撃しろ。足が長い、ペルシャ湾に、空母を廻しておき、全機回収して、インド洋から、マラッカ海峡を抜けて、南シナ海に戻れ。追ってくる機があったら、撃ち落せ。どこの機だか判るはずがない。首相の居場所が判ったら、爆撃して、その後、ラペリングして、確実に狙撃しろ。それで、ロシアは当分静かになる」
「はい」
と、R2号と、R3号が、ハッキリと返事をした。
東シナ海の洋上の空母の司令室でのことである。
ここが一番秘密が、保たれていた。
「ヘリも、ペルシャ湾で回収しろ」
「はい」
「同時に、中国のナンバー1と、2を狙撃しろ。 確実に討ち取れ。
さらに、第三班は、北の次期頭領様の、お坊ちゃんを狙撃しろ。 顔は、すでに、割れた。狙撃隊全員に、写真を配れ。米国風の軍装で行け。ただし、国旗は一切使うな。居場所は、すでに掴んでいる。
この五人を倒せば、静かになるだろう。喧しいことを、やったら、こうなると教えてやれ」
「はい。いままでに、狙撃で失敗したことは、一度もありません。今度も成功させます」
「む。2号、3号の腕は信用している。頼むぞ」
琉球国の全土を、電磁波のバリヤーが、被っていった。
しかも、琉球国政庁は、地下六十メートルの下にも、緊急避難の本部を造ってあった。
いざというときには、そこに大統領府が置かれるのであったのである。
しかも、大統領府や、枢要な建物の全方位には、熱センサーで追撃する、ミサイルの三十連装が、203ミリ砲や、高射速射砲とともに、設置してあった。
海沿いのこれと思う場所には、すべて、砲塔が、全島、針ネズミのように、設置してあった。
常に臨戦態勢をとっていたのである。
その上で、巡洋艦や、駆逐艦が、全領土を監視して、巡回していた。尖閣諸島には、すでに、軍事施設をガッチリと造ってあった。
大東島も、琉球の領土である。
同様に守備を固めてあった。
琉米安保条約も結んでいたが、琉球の守りを見て、米側は、
「このバリヤーを突破するのは、容易ではないな」
と言って、首を振った。
「日本も、この緊張感を、真似をすればよいのにな」
と言った。
先の中国との、講和条約で、琉球に編入することになった、台湾と、海南島には、スピーディーに、鉄壁の軍事施設と、総督府を造っていった。
この両島からは、確りと、税金を徴収した。
総督府や、軍の施設には、琉球共和国の国旗を掲揚した。
両島の住民には、兵役を課した。
軍事教練と、思想教育を、徹底して施した。
さらに、海南島には、原発を一〇基建設することにした。
企業誘致で、電力需要が増したのである。
*
案の定、チベットに、中国が、攻撃を仕掛けてきた。
チベットは、十四世紀頃までは、漢人に、吐蕃と呼ばれていた。
勇猛な部族なったのである。
ソンツェン・ガンポ王が、チベットを統一して、強大な国を造っていたのである。
その、DNAが流れている。武器、兵器を取り上げられていたので、漢人の中国に、虐げられていたのである。
その、虐げられた思いが、鬱積していたので、中国兵に対して、勇猛に怨を晴らす勢いで、敵対していった。
また新彊ウイグルも、漢人とは、全くことなった、トルコ系の民族と、タタールなどの、遊牧民族が混血したりして、ウイグルを構成していた。
モンゴルや、シベリア平原の騎馬民族の血も入っていたので、決して穏和な部族ではなかった。
それが、武器、兵器がないために、漢人に良いように、虐げられてきていたのだ。武器と兵器を持ったので、俄然、漢人に対抗していった。
それを、Rグループが、短期間に教練をしていった。
集まった群衆を、小グループに分けて、戦闘出来る、団体に造り上げていった
のである。
チベットもウイグルも、意気さかんであった。
戦車、装甲車、自走砲と、重機関銃を、ハンビーに搭載して、山岳部の中にあ
る平野を、疾駆して、敵を掃射しまくっていった。
背後からは、203ミリの榴弾砲が、敵を爆破していった。
多連装のロケットランチャーが、ロケット弾を発射した。
戦車が、敵を撃破していった。
西側からは、ウイグルが、猛然と中国軍に襲いかかっていった。
北方からも、内蒙古とモンゴルの兵が、襲い掛かり、旧満州方面からは、女真部の一団が襲ってきた。
中国は未だに一枚岩ではないのである。
中国になってから、高々六、七十年のものである。
長い中華の歴史からみたら、共産主義は、本当に短い期間でしかない。
中央部はともかくとして、地方の部族は、貧しい生活を強いられてきていた。
それが、一気に噴出したのであった。
中国軍は、完全に四方から攻撃を加えられていた。
首脳部は、完全に、狼狽していた。
相当に、軍備を整えてきたのであったが、その間に、地方の部族たちも、確りと軍備を整えてきていたのであった。
しかも、個人装備は、明らかに、中国軍よりも、新式であった。
しかも、中国軍は山岳部を登っていくのに対して、チベット軍は、撃ち下ろしていくのである。
それだけでも優位であった。
中国軍が、単なる小銃であるのに、対して、チベット軍は、マシンガンなのであった。
夜間の戦闘に入ると、チベット軍は、暗視スコープで、狙撃をしてきた。
消音器つきなので、何所から狙われているのかも、わからなかった。
チベット軍は、遠慮しないで敵を、撃ち倒していった。
中国軍は、明らかに不利であった。
一気に浮き足だっていった。
もの蔭に隠れていた者が、少し動いただけで、チベット軍に確実に射撃されていった。
戦車と、装甲車が、先に立って進撃してきた。
それらを盾にして、チベット軍が、攻め下ってきた。
中国軍は、雪崩を打って山岳部から蹴散らされていった。
迫撃砲が次々に炸裂した。
土煙りと共に、中国兵が、吹き飛ばされていった。
*
北京の政府本部に戦況が、続々と報告されてきた。
どの方面の戦況も、中国に不利なものばかりであった。
北京の近くでも砲声が聞こえはじめていた。
チベット方面は、特に大惨敗であると言う報告が入ってきた。
首席と首相が、
(どうすべきか?)
と軍の首脳も含めて相談していた。
(飛んでもない、大惨敗になってしまった)
と誰しもが思っていた。
その会議の席の上空で、ヘリの音がした。
複数のヘリの音であった。
誰もが、
「ん?」
と思った。
その時に十数本のロープが地上に落下してきた。
警備の兵が、駆け寄ってきた。
しかし、彼らは、ヘリのガトリング銃に、掃討されてしまった。
ラペリングのロープを伝わって、特殊兵が地上に降り立って、マシンガンで、周囲の者を撃ち倒していった。
そして軍首脳の、首席と、首相を確実に、射殺していった。
死亡を見届けると、地上に降り立ったヘリに、一斉に舞い戻った。
人数を確認すると、そのまま、上空に舞い上がって、北京を立ち去った。
*
日本の北方四島に、降り立った瞬間であった、三発のミサイルが、ロシアの大統領目掛けて、着弾した。
大統領の体は木っ端のように吹き飛んだ。
さらに、一機のヘリが飛来して、数発の弾丸が、大統領の体の中に、吸い込まれていった。
同じ時刻に、モスクワの政庁に爆弾が十発投下された。
首相の体が吹き飛んだ。
ヘリが、飛来して、首相の体に、スナイパー・ライフルが、五発撃ち込まれた。
*
平城の郊外の豪華な屋敷に、十機のジェット戦闘機が飛来して、絨毯爆撃をしていった。
軍と、党の幹部になったばかりの、若者の体が、木っ端微塵になって吹き飛んだ。
その体に、ヘリから降りた兵士が、写真と、顔を見比べて、ライフルを、五発、撃ち込んで、ヘリで飛び去った。
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