第五章 「癌の手術」1

 琉球共和国の、第二代大統領になった中城秀球は、「小さな政府」を標榜して、それを実践した。

国会議員の数も三十人である。

 大統領府も、大臣の数は数名であった。

さらに、公務員の数も大幅に削減して、日本時代から、三分の一にしたのであった。

 手が足りないところは、民間に発注したが、すべて、オープンな、入札にした。

 こうしたことで、歳費を極力減らしていった。

そのために、国民は無税で、生活していけたのである。

 しかし、中国の、首脳部が、奇妙な自信と、大衆への不安を抱いているところから、内政の不安を、外交に振り向けて、ガバメントミスをカバーしていた。

 最も効果的なのは、日本に、大衆の眼を向けさせることであった。そのために、言論統制をしている中国では、騒動のプロを使って、その場面を造り、その映像を、繰り返し使用して、国民を煽動した。

 それと同時に、ロシアと連携して、日本の北方問題を、クローズアップさせるために、これまで、一度も来島したことのない、ロシアの大統領が、北方四島に来るという、見え透いた、威嚇の演出を、するというのであった。

 そして、中国は、既に、空母を装備しているが、ウクライナから、譲り受けたものであった。

 しかし、空母には、カタパルトの装備がなかったので、艦載機の発進が充分な、空母ではなかった。

 このことを、知っていた、R1号は、日本は、米国から、空母を譲渡してもらう

ことで、東シナ海、南シナ海、東南アジアの、シーレーン確保が出来る。日本の空母の技術は、戦前に「瑞鶴」その他の、空母を持っていたことで、技術的には、すぐに補いがつくであろうと思われた。

 しかし、無能な日本政府は、アメリカから、空母を譲り受けるという、高等外交の、方法も判らないでいるだろう。

憲法九条に、固執するあまりに、空母は、専守防衛にそぐわないと、騒ぎ立てるだろう。

 国民の存在、及び、その人命と財産、並びに領国は不易である。対して、憲法は、流行ではないのか。

 国や、国民が、大切なのか? 憲法が、大切なのか? 

主客転倒していることにも、気がつかない。

世界の情勢が、変わっているのだ。

だれも、戦争を好む者はいない。

しかし、泥棒が、我が家に、踏み込み、凶器を突きつけているのに、暴力は、我が家の、家憲で、だめなんですと言っていられるか。

これは、アホだろ。

そんな少数意見は、切り捨てろ。

ま、我々の国ではないから、どうでもいがな)

 と言って、笑っていた。

(中国如きに、威嚇されて、ビビリ捲くっているようじゃ。話にならないな)

 R1は、使いの者に、

「石垣島に、最高級のホテルを建てて、カジノを造れ。外国人専用にしろ。その利益を、軍備の増強にあてるのだ。ウイグル、チベット、内蒙古、満州が、武器・兵器を持ったら、内乱ではすまなくなる。中国のアキレス腱だよ。その上で海上から、三個空母艦隊が攻撃する。琉球国を侮るなということだ。琉球国の司令一つで、独立を勝ち取った、これらの民族は、直ぐに立ち上がる。これまでの中国の搾取にたいして、謝罪と、賠償をせよと、迫らせる手がある。どこの民族が責められても、そのときは、四方から攻撃する。そのために、中国に、武装を解除せよと、各民族に言わせろ」

 と使いを走らせた。

 R1号は、現在何所にいるのか、誰にも教えなかった。

 R1号は、いまは、第一艦隊の空母の司令室にいた。

「小異のために、大同を見誤っている国など、相手にするな。日本の枢要な技術を、すべて吸い上げろ。そのための研究学園都市をつくれ。レアアースは、カザフスタンにもある。ウイグルを通じて、カザフに接触させろ。いつまでも、ロシアの、属国でいたいのか、と脅かせ。ウイグルは、中国から、完全に独立した。地下資源は、インド経由で、アラビア海にパイプラインを引く。カザフが、同じようにしたいのなら、ウイグル、モンゴル、チベット、旧満州、内蒙古、寧夏回国、広西壮国、琉球との九カ国同盟を。結ぼうといってやれ。この九ヵ国と、ロシア、中国と、どちらがパワーがあるか、地球儀をみて考えろといってやれ。そうしないと、また、セミパラティンスクで、核実験をやられるぞ、ということだ」

 R1号の指令で、使者が、ウイグル、カザフスタンに飛んだ。

 すでに、インドシナ半島や、アセアン諸国には、親善の使者を送っていた。

アセアンには、インドも入っている。

中国は、完全に八方を塞がれていた。

「中国は、何を居丈高になっているんだ?笑わせるな」

 R1号が、中国など、歯牙にもかけない、物言いをした。

「中国が何かやりたいなら、漢人だけでやれということだ」

 アジアが大きく動いた。

誰の手によるものなのかは、アメリカにも、イギリスにも、中国、ロシアにも判らなかった。

 ただ、その、国、民族も、

「琉球を宗主国にする」

 と言って、独立をしたのであった。

 各国、民族の者も真のリーダーが誰なのかは、判らなかった。

 琉球共和国には、中城大統領がいる。

指令の名は、秀球であった。

 琉球は平和な国である。

「戦争は、断じて好まないが、土足で入ってくる者には、容赦なく、断固として、鉄槌を加える。日本と異なって、琉球共和国には、太平洋戦争での、コンプレックスは、毛ほどもない」

 と秀球が、演説した。

「一三一万八千人が、力を合わせたら、どんな、外敵にも負けない。必要なときには、適令のものには、銃を執って、戦ってもらう、そのような基礎知識だけは、訓練しておいてもらいたい。しかし、そのときは、来ないように、努力をしている。中国の恫喝にも勝利した。中国は我が琉球国を、小国と侮り、手を出したことを、後悔しているだろう。十八世紀の思想・哲学から、一歩も出ていない、共産主義一党独裁の覇権主義に、自らが気づくべきである。 世界は共存共栄を、渇望しているのに、まったく、逆行している。私は、いつでも琉球の正義のためになら、戦う用意がある」

 と秀球が、全国民に説いた。万雷の拍手が起こった。

 米・英・中・露は、秀球こそが、アジアのニューリーダーだと思った。

 R1号は、MDMAを、

「栄養剤である」

 といってばら撒かせた。

中国人のマフィアを使って撒かれたのである。北朝鮮に撒かせた。

「自分で造ったものだ。自分たちが飲め」

 と撒いていった。

北朝鮮には、粉末にして撒いた。中国の漢人たちにも配った。

「あんなものは、亡国のドラックだ。琉球には、絶対に持ち込ませるな。持っているものがいたら、必ず、監獄にぶち込め」

 とR1号は、指令した。

 R1号には、徹底した哲学があった。

自分の姉の舞が、残酷な殺害をされているのは、嫌でも、承知させられていた。

(いづれは、舞姉さんの仇を討つ)

 R1号は、日本の司法を頭から信じていなかった。

判事も、検事も、弁護士も、警察もである。

(仇は、自分で討つしかない)

 と思っていた。

「司法の刑罰が、異様に軽いと、リンチが行わせるようになる。犯罪も増える。ドラッグを扱うような暴力団は、人間と思うな」

 Rグループは、ドラッグを仕入れると、日本では、一部しか売っていなかった。

中国マフィアに転売して、

「自分の国で売れ」

 と儲けた上に、中国に突き返した。

「日本で売ったら、殺すぞ」

 と断って、渡した。

日本で売ったものは、確実に狙撃した。

 しかし、一定量が、入ってくるのは、仕方がなかった。

 売り子をアフリカから、連れてきて商売をさせた。

「こんなことは、掃除のしようがないんだよ。買うほうも、クスリを飲んで、セックスしようと思っている莫迦な奴だからな。そんな、クズからは、儲けたらいい」

 R1号には、清濁を合わせ持つ、器量があった。

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