第四章 4

予想はしていたことであったが、この小さな国に、中国が、毒牙と、爪を伸ばしてきたのである。

 戦艦が出現して、尖閣諸島の、領有権を主張してきたのであった。

 尖閣諸島には、すでに、琉球人が住み、ホテルも出来ていた。

「琉球国には、領土問題は、存在しない」

 と返事をすると、戦艦や、潜水艦が、排他的水域を侵犯してきた。

 すかさず、琉球共和国は、対抗手段として空母艦隊二個が、防衛に廻った。

 琉球共和国を軍隊は、Rグループの戦闘部隊でもあった。

R1号は、この機会を見逃さなかった。

 かねてからの準備を、フル回転させて、作戦を、実行に移した。

 同時に、モンゴルから、戦車、装甲車、自走砲や、戦闘機、爆撃機が、国境を越えて、内蒙古自治区を侵犯して、北京を目指しはじめた。

 さらに、ミャンマーから、雲南省、四川省に同じく、戦車、装甲車、自走砲が、国境を越えて侵入した。

 これに呼応して、チベット自治区及び、ウイグル自治区の民衆が蜂起した。

 モンゴルにいた、戦車、装甲車、自走砲が、ウイグル自治区の民衆を、煽動したのである。

後方攪乱、宣伝工作、煽動は、Rグループの得意の戦法である。

「中国が、暴挙に出るなら。我々は遠慮をしないで、北京に攻め込む。これを、宣戦布告と了承するが宜しいか」

 と猛烈に、外交的なプレッシャーを加えていった。中国のアキレス腱は、すでに押さえていたのである。

 周章狼狽したのは、中国側であった。

既に、北京郊外を陸軍が、包囲しているのである。

各種の軍用機も飛来していた。

 琉球共和国に対する、中国側の、先制攻撃に対して、アセアン(ASEAN)諸国が、中国の横暴に、警告を発した。

「中国に、アジアの平和を乱す権利はない。琉球共和国を、寸土でも侵犯したら、我々、アセアンは、一致して、琉球共和国を支援する。行動を取るものである」

 と言う声明を発表した。

 さらに、チベットと、新彊ウイグルが、独立を宣告した。

 中国は、東シナ海、北の内蒙古、西の新彊ウイグル、南のチベットに囲まれていた。

 ウイグルも、チベットも、最新鋭の武器、兵器を手にしていた。すべて、Rグループの供与によるものであった。

 中国軍部は、明らかに、琉球共和国を侮って掛かっていた。

それを、逆手に取られて、取り返しのつかないピンチを、招いていた。

 中国は官憲が、機動隊を出動させたが、警察の機動隊などで、制圧出来る暴動では、なかった。

軍備とともに、潤沢な食糧が、搬送されていた。

各部族が、孤立しないで、連携を取るために、特殊周波数の無線機器を持ち

込んで、前線基地に設置していた。

移動無線局が、作戦車に帯同していたのである。

 R1号の指令が、ダイレクトに、各前線に、矢のように、下されていった。

 R1号にしたら、予定の行動の範疇であった。

戦略図面までが整っていた。

地上は、すべて、軍用衛星で、映し出されていた。

 早くも、ウイグルは、青海省、甘粛省になだれ込んでいった。

警察の機動隊は、ウイグル軍のマシンガンや、機関銃で、将棋倒しに

倒されていった。

ウイグルの民衆は、ショットガンと、カービン・ライフルで武装していた。

 同時に、チベットが、雲南省、四川省に、これも、武装して、雪崩れ込んだ。チベットからは、撃ち下ろしになったので、有利であった。

 両民族とも、常々、

「武器さえあれば」

 と、歯軋りしていたのである。

 その、両民族に、最新式の武器を渡したのである。

 中国の艦船が、この事態に、思わず後退していった。

(この上、アセアンを敵にまわしたら、勝ち目はない)

 と判断したのである。

 その時に、琉球軍の戦艦の主砲が火を吹いた。

敵の護衛艦に命中した。

艦船から、火柱が上がった。

 さらに、グァムから、アメリカの空母が出動をした。戦闘ジェット機が飛来した。

 琉球軍の艦船が、一斉に、主砲の火を吹いた。

 モンゴルや、内蒙古の、北からの軍が、203ミリ自走砲を、北京に向けて発射した。

十数門の203ミリ砲が、次々と着弾していった。

狙いは、首都護衛の師団本部であった。

弾丸が、火薬庫に命中した。大音響で爆発した。

 東シナ海の琉球軍は、全艦船が発砲した。

それと共に、空母の艦載機が、大陸に向かって、次々と発進していった。

上海、南京、杭州、寧波、福州を爆撃した。

 さらに、もう一個の空母艦隊が、黄海、渤海に攻め込んだ。

 ツーボーの石油基地、天津の石油基地を、爆撃した。

艦砲射撃で沿岸の市街を攻撃した。

ビルが次々と、倒壊していった。

ウイグルも、その模様を、衛星からの映像で、連絡されていた。

勇躍した。

 チベット軍も同じであった。日頃の怨があった。

まさしく猛攻であった。

北京の幹部たちは、

「しまった」

 と後悔したが、四方からの猛攻に対処の仕様がなかった。

まず、軍事基地を徹底して、猛攻した。

基地は、油断していた。

ために、徹底的に、攻略された。

中国から、白旗があがったが、琉球国は、

「我々はもう攻めていない。ウイグル、チベットが攻めているのは、どうすることも出来ない。両民族の独立を、認めることだ」

 といった。

しかし、ウイグル、チベットの背後にいるのは、R軍団であった。

 中国は、ロシアに援軍を求めたが、連絡回線は切断され、無線は、電波を攪乱されていた。

交信不能であった。

 中国はこのままでは、全土を蹂躙されるという、危機感を持った。

両民族とも、戦車、装甲車、自走砲を持っていたし、ハンビー、ハマーに重機関銃を搭載して、走り廻っていた。

 中国の兵隊の姿を見ると、機関銃を発砲した。

自走砲と、戦車が、中国軍の基地を狙い撃ちにしていった。

大砲が唸り、爆発し、歩兵たちは、マシンガンを、連射し、マガシンを取り替えては、中国兵を倒していった。

 両民族に触発されて、寧夏回族自治区、内蒙古自治区、広西壮族自治区が、叛乱に加わった。

武器と兵器が、続々と手渡されていった。

食糧も運びこまれた。

 こうなっては、四方どころではない。

あらゆるところで、火の手があがった。

東北部の女真部も叛乱に加わった。

旧満州である。

遼寧省、吉林省、黒竜江省が、叛乱したのである。

中国は、五〇以上にも及ぶ、多民族国家である。

一番数の多い、漢人が、他の少数民族をコントロールしてきたのであった。

 しかし、自然災害での、洪水や地震、土石流で、内陸部は、崩壊同然になっていた。

そこを、繕わないで、琉球を攻めたのである。

 琉球国は、中国の動きは、折込済みであった。

そこで、ミャンマー側から、チベットに武器、兵器を渡して、

「合図を待て」

 と諭した。

ウイグルも同様で、モンゴルの西側から、武器、兵器を運び込んだ。東モン

ゴルからは、内蒙古や、旧満州の東北部に武器、兵器を渡した。

 R軍団の得意の、特殊工作であった。

 旧満州には、北海道から、ウラジオストクの朝鮮よりの、ポシエット郊外から、牡丹江に入り、吉林、長春、大慶、ハルビン、チチハルに侵入していった。

 こんな折込済みの攻撃をされるのは、中国が大国然と、近隣諸国を、睥睨してきたためであった。

 その証拠にベトナムは、米国と提携して、中国の不穏な動きと、シーレーンの確保をしようとしていたのであった。

 政情不安な、タイ以外は、アセアンとして、中国の動きを、注視してきたのであった。

 東アジアの韓国も、レアアースを戦略商品にしてくる、中国に警戒感を持っていたのである。

 一番だらしがない進退を見せたのは、日本であった。

弱腰を通り越して、ヘッピリ腰であった。

 中国の恫喝に、一々右往左往して、結局、何も出来なかった。

 各国とも、日本の何とも情けない対中国策に、見切りをつけた感じであった。

何事も、アメリカ頼りであった。

アメリカの属国以下の対応であった。

その、アメリカも、さすがにウンザリとしていた。

「金がなかったら、ただの猿だな」

 というのが、顔に出ていた。

 日本の態度は、徹底的な、骨抜きの、蛞蝓みたいな態度であった。

「日本は、お詫び癖がついているのだ」

 国民たちの方が、恥ずかしくなる思いがした。

主権も何もない、国になってしまった。

 総理大臣が、大相撲で、優勝カップを渡している場合ではなかった。

「何なのだ、あの総理は」

 と何所の国も思った。

開いた口が塞がらないとは、このことだろう。

緊張感の欠片もなかった。

 秀球も、そう思った。

 中国の首脳が、気づいたときには、中国の大半が、叛乱の惹き起こした、動乱の渦に巻き込まれていた。

 収拾の付けようがなかった。

 事態の始末を付けるのに、中国の首脳陣は、琉球国に侘びを入れて、各民族に渡りをつけてもらおうということになって、その使者が、琉球国にきた。

「謝罪と賠償をせよ」

 琉球国の、大頭領の秀球が言った。

「台湾を琉球国に編入する。尖閣諸島には、一切、領土問題はない。それと海南島も、琉球国に編入する、無理だというなら、各部族に、もっと暴れてもらうことになるが」

 中国は、その条件を飲んだ。

「各民族は、独立を望んでいる。特に、ウイグルと、チベットは、その希望が強い。それを聞き入れなければ。我々にも、どうすることも出来ない」

 中国は、チベットと、ウイグルの独立を了承した。

「ここまでは、お詫びだ。賠償として、レアアースの販売の独占権を貰う。嫌なら好きにしろ。また、民族が暴れるだけだ」

 秀球の言葉は毅然としていた。

その言葉に、中国側が折れた。

各民族の代表者に、連絡を入れた。

「独立を認めた」

 と言う秀球の言葉に対して、代表たちは、

「我々の宗主国は、琉球共和国で、あって欲しい」

 といったのであった。

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