第四章 2

「しかし、白井は、良く調べたなあ。北斗七星の足の裏の刺青が、中国マフィアの幹部の印で、3皇の女の刺青が、割符になっていたとは・・・」

 渋茶を飲みながら、渡部がいった。

「推理はしていましたが、ブラフです」

「ハッタリか?」

「はい。当てずっぽうではありませんが、推理は的中していました。北斗七星団の中にも、派閥があるのでしょう。それで、仲間同士の取引でも、割符を使った。それが女たちの刺青です。三皇の刺青とは・・・逮捕した女の背中に、被害者の刺青と同じのが、一人、もう一人が、神農だったときに、ピンと来たんです。あの別荘で、取引したなと・・・」

「地下室から、二トン分の麻薬類が出た。大量の、ドル紙幣と一緒にな。基準通貨はドルだ。元や、円では、他国で使いにくい」

「中国は、なんだかんだと、イチャモンをつけてきますが、今度のような、犯罪も、日本で行っている。これには、何もいいませんね。だから、ロシアと、中国は、世界の嫌われ者になるんだ」

「日本も、相当に、嫌われていますよ」

「ちげえーねえ」

「日本は、麻薬類の、相当な消費地になっているんです。だから、やつらも、必死になって、運び込んで来るんでしょうね」

「何所の国にも、悪(ワル)はいる。それにしても、中国人は、口の中にスピーカーがあるように、声がでかいな」

「日本とアメリカが、尖閣列島は、日本の固有の領土だといったら。ロシアと中国が、打ち合わせて、ロシアが、北方領土は、ロシアのものだといっている。チームプレイだな。 ロシアは、終戦三日前に、不可侵条約を破って、参戦してきたくせに、よく言うよ。樺太(サハリン)の天然ガスなんか、買わなければいいんだ。東シナ海で出るガスを、琉球から、買った方が良い」

「日本は、いつまで、サンドバックになっている積りなんですかね。一ドル五十円の時代が来ますよ。政府、日銀が為替に、介入しても無理でしょう。日本は、産業の空洞化が来て、失業率は、15%台になるんじゃないですか。犯罪が増えますよ」

「本気で、内需拡大を考えて、農業問題と、地方のインフラを、充実させて、企業を地方に分散させなくては、やっていけなくなりますな。 

 これまでは、米国に、オンブにダッコで経済を立て直してきた。 

 その代表的な例が、為替の固定相場で、一ドル、三六〇円だった。これで、輸出が増えて、経済復興が可能になた。 

 それを、日本は、自力で立ち直ったと錯覚した。飛んでもないですよ。

 欧米のお情、特にアメリカに手を引いてもらって、立ち直ったのです。 

 一九世紀に、産業、科学、化学、医学と、あらゆる分野が、欧米によって改革された。残念ながら、日本も含めて、アジア、アフリカは、何の、発見も、発明もしなかった。 

 当然、欧米は、世界制覇を考えて、帝国主義になって、第一次、第二次世界大戦になった。

 しかし、欧米列強は、カイロ宣言で、日本の分割統治案を練っている。日本が、分割統治されなかったのは、米国が、日本の共産国化を嫌って、ロシア、中国を排除したからです。 

 そうでなければ、日本も、ドイツや、朝鮮のように、国を分断されていただろうよ。 

 アメリカが、日本に原爆を、二個落としたのは、日本を倒すためでは、ないな。犠牲になったのは、日本人だが、新型爆弾の威力を、ソ連、中国に見せつけるためだったのだろう。 

 すでに、次ぎの戦争、共産主義圏対、自由主義の対立が、始まっていたさ。  それが、アジアで、具体的に勃発したのが、朝鮮戦争と、続いて起こったベトナム戦争だな」

「中国は危険で、訳の判らない国ですよ。 政治体制は、共産党一党体制で、経済は自由主義なのですから、バランスは悪いですよね。

 それで、限られた地域だけは、突出して、開放経済を謳歌しています。けれども、内陸部にいったら、以前のままです。当然、経済格差が出来て、その不満は、飽和状態です。 

 その内政の不満を、外に向けているのです。ターゲットは、日本です。内政のエラーを、外交に振り向けているんです。 

言論は限られていますし、日本の国旗を焼いたりといった場面ばかりを、テレビで意図的に流しています。 

かれらは、そういうことをやるプロですよ。それが、国営放送で流れてくるのを、日本人は本気で信じているんです。 

中国の製品を、日本とアメリカが買わなくなったら、中国は直ぐ経済破綻をしますよ。 

だから、レアアースを出荷禁止にしておいて、その舌の根も渇かないうちに、輸出禁止とはいっていないと言うコメントが出てくるんです。表と裏がありすぎるんですよ。 

本気で、日本の海自が渤海近辺にズラリとならんだら、言葉を引っ込めますよ。 もしくは、これ以上の反目的発言は、宣戦布告と受け取ると、断固としていったら、コロッと態度を変えますよ。 

戦争なんかしている余裕は、中国にはありませんから。 

それを、政治家がアホだから、打つ手を失敗するのです。艦隊を渤海に集めるだけで良いんです。そのための自衛隊でしょう。まるで、駄目な内閣ですね。解散した方がいいですよ。 

空母を造るべきです。空母があっても、専守防衛ですよ。アメリカから、艦載機つきで、買ったほうが早い。それで、アメリカの景気も回復に向かっていくでしょう。 何やっているんですかね。まるで、幼稚園みたいな内閣ですよね」

 白井が、ざっと、文句を並べ立てた。

「白井。上の者には言うなよ」

「勿論です。渡部さんだから、甘えていってるんです」

「それなら、良いが、ま、中国にも、ヤー公は、沢山いるわな」

「はい。北斗七星団は、その中の、一つで、大きい団体ではないそうです」

「しかし、そうしてみると、被害者の男女は、北斗七星団の組員だろ。ライバルの団体が、見せしめに殺したと言うことに、なるんじゃないのか?」

「はい。そこなんです。林から訊き出したいのも」

 と白井も考え込んだ。謎の多い事件であった。

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