トレンドカラーは結局毎年ピンク

 明日は双子の藍乃と藍乃の先輩の通う大学に見学に行く。今日は藍乃はバイトなのでわたし、浅井紺乃は友達以上彼氏未満といった仲である京極伊澄君とデート? お出かけである。


「そういうわけでね、藍と大学を見に行くのよ」


「へー、いいじゃない。俺もそろそろ考えないとな」


 京極君はカフェのカウンターの隣の席でコーヒーで手を温めながら言う。寒がりみたいだ。この間出かけた時も春だというのにびっくりするくらい手が冷たかった。


「京極君の得意科目ってなに?」


「社会系かな。歴史全般と地理は好きだよ。公民もまあ」


「社会系が得意だとどういう方向だろ。法学とか経済、政治系?」


「そうだね。あとは理数もまあまあかな。国文、英語系はあんまり」


 それだと理科系? 社会、数学の両方が得意なら経済系はありだろうか。


「なんかね。あんまり今までそういうこと考えてこなかったからよくわかんなくて」


「俺もそうだよ。ていうかうちの高校にそんな熱心に進学について考えてる奴いる? 特進クラスならともかく」


「まあそうなんだけどさ。そろそろそういうこと考えて、来年には大学生ってなると焦るし、焦ると頭の中こんがらがってどうしていいやらだし」


 ふてたようにわたしが言うと京極君は苦笑する。


「みんなそうでしょ、って言っても納得しないか。まあ出来ることからやるしかないし。じゃあ新学期始まったら一緒に進路指導室行こうか」


「え、大丈夫? 熱心な先生に怒られたりしない?」


「大丈夫。あそこ大学の資料とか、うちの高校で持ってる推薦一覧をまとめたプリントとかあるからさ。取り合えず選択肢を目で確認できるよ」


 なんか不安だな。いきなりあれこれ言われてもついていける気がしない。こんなチャランポランで叱られたりお説教されたりしないだろうか。


「怖がりすぎ。進路指導の先生だってさっさと進路決めて出ていってほしいんだから、ちゃんと聞きに行けば丁寧に説明してくれるよ」


「そうなんだけどさ。自分から先生を訪ねるってしたことないから緊張する」


 そういうと京極君はふわっと笑って、そっとカウンターの上のわたしの手に触れた。


「大丈夫。一緒に行こう」


「……はい」


 なんか、もう。コーヒーの匂いと温かい指先に照れるしかなかった。

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