明日は全てを疑うのだ
明日家に遊びにおいでって未吉から連絡来た。俺、南雲が先日友人である未吉の家に頼みごとをしに行ってぶっ倒れてから初めてお邪魔することになる。
本当に行って大丈夫だろうか。西浜さんは怒ってなかろうか? 女性二人暮らしのところに突然現れて挙句に看病させて、ほんとどんな顔で明日会いに行けばいいんだ。いやでもやましい顔で行くのも怪しいし、ここは堂々と行こう。そもそも未吉に仕事のことで確認したいことがあったから最初に連絡したんだし。お詫びについては、なんか良さそうなお菓子でも買っていこう。洋館とかでいいかなあ。なにがいいんだ?
俺は西浜さんのことを何も知らない。カレーを作るのが上手で、未吉のルームメイトで、浅井先生の担当をしている新人編集者である。それだけだ。なんで未吉と一緒に住んでいるかも知らないのだ。一体何を土産にしたらいいんだ。
わからないことを悩んでもしょうがないので、とりあえず外に出る。最寄り駅の駅ビルにちょっとした土産物店や有名どころのスウィーツショップが多少入っているからそこを見てみよう。
で、来たものの本当にどうしていいかわからなくて、店員に勧められるがままにあれこれ買いすぎてしまった。相手は女性二人暮らしだというのにこんなに大量に買ってどうするんだ。一応賞味期限はどれもそこそこ長いし、たぶん大丈夫だろう。
俺は何をしてるんだろうな。自分の挙動に笑いが出る。全然知りもしない相手なのに、会えるとなったらはしゃいでおやつ買い込んで。俺は彼女のことを全然知らない。会ったのだって2回だけで、明日で3回目。向こうだってそうだ。俺のことなんて全然知らないし何とも思ってないだろう。そんな相手にぐいぐい来られたら気持ち悪いかもしれない。そもそも彼氏がいる可能性だってあるのだ。
それがなんだ。それらは俺が彼女を諦める理由にはならない。手に持った大量の紙袋をぐっと持ち上げる。明日は堂々と会いに行く。そっからどうなるかはわからないけど、継続的に会えるようなにがしかのアプローチができたらいいなと思う。なんもかんもふんわりだけど、できることからやっていこうじゃないか。
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