海老で鯛を釣る日。どういうこと?

 隣のクラスに浅井紺乃さんという可愛らしい女の子がいる。その子は図書委員会に所属しているのでたまに図書室のカウンターにいるのだけど本にとても詳しい。こういう本はありますか? とかなり曖昧な質問をしてもささっと『こういうのはどうでしょう?』と何冊か選んでくれる。図書館の人みたいですごくかっこいい。

 その浅井さんには双子の姉妹がいる。僕と同じクラスの浅井藍乃さんだ。紺乃さんとははっきり言ってすごく似てる。正直外見だけで見分けるのはかなり難しい。たぶん学年の9割がたの人たちは区別を諦めているし、先生たちだって見分けているかは怪しい。

 「浅井さん。今少しいいかな」

 「いいけど、紺に連絡するから待ってね」

 その日の放課後、僕は勇気を出して浅井藍乃さんに声をかけた。彼女は快く話を聞いてくれる。

 「その、紺乃さんのことなんだけど、ちょっと気になってて」

 「お? 紺? へ~~~~~? そうなんだ~~~~~~??? どういうとこ?」

 「えっと図書室で本を探してるとこがかっこよくて」

 「へえ」

 「いつもは可愛い感じなんだけど、そのときはすごいきりっとしてて、それ見てドキッとしちゃって」

 「へええ」

 「それで、たまに目で追ってたら結構いろんな人に親切にしてるけど周りに誰もいないとめっちゃ無表情で」

 「あー」

 「ギャップにもうやられました」

 藍乃さんがすっごい乗り出して聞いてくるからか、ついあれこれ語ってしまった。なんか同じ顔だから本人に告白してるみたいですごく恥ずかしい。そしてなぜか聞いてきた藍乃さんも顔を赤くしてうつむいていた。

 「あ、あの。浅井さん?」

 「はぃ」

 「えっと、そういうわけだから紺乃さんと仲良くなりたくて、でもどうしたものか」

 「ぇっと~。う~ん。ちょ、ちょっとわたしも考えてみるよ。でも取り合えずは今まで通り図書館で声かけたり本の話をして顔見知りになる、でいいんじゃないかな」

 「そっか。そうだよね。王道に近道はないって言うし。ありがと!」

 「い、いいえ~おかまいなく~。じゃあ帰るね」

 「うん。ほんとにありがと。また明日」

 僕は浅井さんに手を振って教室を出た。

 

 

 

 「藍、お待たせ」

 「いいよ~。あれ紺、顔赤いよ」

 「う、うん。なんか告られた」

 「はあ? 彼氏? できちゃった?」

 「いや~間違えられてる……」

 「あら~」

 

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