あ~~~~~~目ん玉取り出して丸洗いしたい

 「かゆぃ……かゆぃ……」

 「景、大丈夫?」

 「ダメ……」

 「目薬は?」

 「ある。指した。じゃばじゃば指した」

 「……それだけかゆいなら帰って洗眼しないと意味ないか」

 「あうううううう」

 花粉症あるある状態の私こと西浜景は、友達とお花見に来ている。花粉症の民が花見と馬鹿では?って言われても仕方がないし、私もそう思う。でもちゃんと薬飲んでるし目薬も点鼻薬も欠かさず指してるし平気な気がしたんだ。気のせいでしたけど!!!

 「まあ、これだけ杉とヒノキに囲まれてたら仕方がないよ。ゆっくり歩いて帰ろう」

 「ごめんねえ……」

 「帰って目洗ったらお花見っぽいディナー作って」

 「ありがと~~~~~いくらでも作る~~~~~」

 私は目と鼻からいろんなものを溢れさせつつ感謝の意を伝える。本当に申し訳ない。せっかくのお花見だったのに。そうして垂れ流しながら夕ごはんになにを作るか考える。

 「花見っぽいもの……甘酒?」

 「あと桜の塩漬けでなにか」

 「う~~~~~。お菓子に混ぜたりは聞くけど、食事はどうかなあ」

 鼻をかみながら考える。スープに浮かべるとか? かつお出汁のあっさりめのスープなら合うかもしれない。

 「あ、100均寄ってこ。桜の形の型抜き買おう」

 「そんなんあるんだ。いいね」

 「なんかこう、ハンバーグに桜の形のグラッセ乗せたりとか」

 「かわいい。幼稚園児のお弁当みたい」

 桜ディナーって他になんだろう。ごはんに桜でんぶ振ったりとか?

 「まあでも、なににするにせよ目洗ってからでいいよ。鼻も真っ赤になってるし」

 「すまないねえ」

 「ええんやで。どうせ顔もなんもかんもかゆいんでしょ」

 「はい。顔の表面から内側までなんもかんもかゆいです」

 健全な精神は健全な肉体から、という言葉をこういう時に実感する。こんななんもかんもかゆいときにまともな思考が働くわけない。人に親切にも出来なければ、隣にいる友人への感謝も鼻をすすりながらなのだ。

 「あ~~~~~かゆい」

 「うん。さっさと帰ろう。景が顔真っ赤にしてるの見るとこっちまでかゆくなる」

 花粉症の民は大変だなあ。そう、あっさり流してくれることが今はありがたい。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る