119 合わせ鏡

 昨日学校でねぇ、おもしろい話を聞いたんだ。


 まずは鏡を二枚用意する。


 それを向かい合わせに置く(合わせ鏡って言うらしいよ)。


 そして夜の零時に覗くと、将来の自分が見えるんだって。


 すごくない? 試してみたいと思わない?


 だから僕も早速昨日試してみたんだ(零時って今日なのかな? 昨日なのかな?)。


 僕はいつも十時には寝ちゃうから眠かったんだけど、将来の自分が気になってがんばって起きてたんだ。


 将来の僕は何になってるんだろう? 消防士? プログラマー? もしかしてユーチューバーとか(映った顔でお仕事は分かるもんなのかな?)?


 そして零時のちょっと前。


 僕はドキドキしながら合わせ鏡を覗いたんだ。



 鏡の中には無限に続くが映っていた。


 そう、僕だ。毎日見ている小学四年生の僕が映っていたんだ。


 顔をちょっと動かしてみるけど鏡の中の僕に変化はない。


 時間はとっくに零時を過ぎていた。


 結局大人になった自分なんか映らなかった。


 でも、合わせ鏡って面白いね。


 あんなに沢山の自分の顔を見たのは初めてだよ。

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