117 救急の電話

「もしもし! もしもし!」

「はい、こちら災害救急情報センターです。何かありましたか?」

「ちょっとぉ、うちのパパ、パパがねぇ息してないのよぉ」

「いつ頃からですか?」

「今、今なのぉ。ええと……あっ、遊んでたら急に」

「至急救急車を向かわせますね。お名前伺っても宜しいですか?」

「ええと……ミオ……ミオよ」

「それと、電話番号と住所も教えてください」

「住所? ちょっと待って。……ええと……あっ、東京都、新宿区、〇〇……」

「はい。電話番号は?」

「ええーと……うーん……03-××……」

「分かりました」

「すぐ来てね!」


 男はすぐさま近くの病院に搬送された。一時間程経ち、仕事中だった妻が駆け付ける。

「夫は、夫は大丈夫なんですか?」

「ええ、搬送された時は危なかったんですが今は問題ありません。迅速な対応で事なきを得ましたよ」

「良かった……そういえば誰が通報してくれたんですかね?」

「えっ? 娘さんとかじゃないんですか?」

「娘が? 娘は通報なんかできませんよ」

「娘さん、何かを見ながらがんばって伝えてくれたそうですよ。救急隊の方が言ってました」

「そうじゃないんですよ」

「と言いますと」

「娘は三歳ですし、それに今日は幼稚園にいるんです」

 怪訝そうな面持ちでれいが答えた。

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