「うわっ！！」

　登りに差し掛かったところで俺は思わず急ブレーキをかけてしまった。前の車のリアガラスに青白い女の顔が浮かび上がったからだ。あれはどうみても生きている人間じゃあなかった。そもそも後ろに荷物スペースがあるタイプのワンボックスカーだったので同乗者がリアガラスに顔を近づける事は出来ないはずだ。幸い俺の後ろに車はいなかった。もし後続車がいたら急ブレーキで事故を起こしていたかもしれない。

　心臓をバクバク鳴らしながら信号待ちをしていた前の車に追いつく。ゆっくりと車間距離を縮めるが……リアガラスには女の顔はなかった。

　家に帰りネットで調べた俺は全てを理解した。検索ワードは『リアガラス　幽霊』で、検索結果は『ハイビーム対抗ステッカー』。なんてことはない。リアガラスにライトが当たると幽霊じみた顔が浮かび上がるステッカーだそうだ。何でも韓国ではこのステッカーを使い道路交通法で逮捕されたやつがいるらしい。ほんと迷惑なステッカーだ。