097 治験

・四月一日

 今日から治験のアルバイトが始まる。詳しくは分からないが体を健康にする為の薬らしい。半年間施設内で暮らさなければならないのは面倒だが三食付で生活に困らないのがおいしい。それにアルバイト代として月々三十万円が支給される。時給八百六十円でコンビニのアルバイトをしていたのがバカみたいだ。五十にもなって正社員で俺を雇ってくれるところもそうそうないから本当に助かった。とりあえず半年間は悠々自適に暮らせそうだ。


・五月三十日

 体の調子がすこぶるいい。薬の効き目なのか健康どころか若返ったような気さえする。三食出される食事もバランスがいいので本当に健康的な生活を送れている。二ヶ月前では考えられなかったまともな生活だ。それにしても暇だ。タバコは元々吸わないが酒が飲めないのはつらいところだ。金も使ってないし看護師に言ってゲームでも買って来てもらおう。


・七月十日

 この薬は本当に健康が目的なのだろうか。顔のシワもなくなり老眼すら無くなった。体力で言えば二十代の頃まで戻ったようだ。自分で言うのも何だが記憶力や語彙力もそこら辺の若者には負けていない自信がある。施設内のスポーツ施設で汗を掻くのが本当に楽しい。二十代の頃にはそこまで意識していなかったが若いと言うのは本当に素晴らしい。治験を受けて本当に良かった。


・八月十八日

 十才くらいまで若くなった。この薬は本当にすごいと思う。それと、ごはんもめちゃくちゃおいしいし、運動も楽しい。ゲームをたくさんしても怒られないし本当に天国だ。今日の夕ごはんは何だろうな。楽しみだ。


・きゅうがつよんにち

 きょうはおとなのひととたくさんあそんだ。たのしかった。ごはんもおいしかった。




九月三十日

 今日で第〇二三六号への薬の投与を終了とする。現在健康状態に問題無し。五十まで重篤な疾病は無し。喫煙習慣も無し。引き続き十九時より手術を行い、完了次第順次対応するものとする。

 A小児科……心臓

 B大学病院……肺

 C医院……角膜

 ……

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