058 お大事に
俺の彼女の偏食がやばい。
スーパーで買う食材は廃棄寸前のものばっかだし、近頃は昆虫食に目覚めたようで朝からコオロギの素揚げが食卓に出されることがある。
それが原因でちょくちょく喧嘩をするようになった。俺は普通の料理が食べたいのに彼女は頑として受け入れてくれない。世界の食糧難が差し迫っている、食べ物を大事にしないと――彼女の言い分はこうだった。ほんとWHOの職員かよ。
それで今日、喧嘩がヒートアップして俺は遂に殺されてしまった。いや、まだ虫の息だから殺されてはいないか。そんな死にかけの俺を彼女は能面の様な冷たい表情で見下ろしている。そして不意に微笑んだと思うとリビングを後にした。
どの位時間が経ったのだろうか。体感的には何分も時間が経ったように思えるが、恐らく一分もかかっていないだろう。気付くと彼女が台所から戻ってきていた。
「食べ物は大事にしないとね」
薄れゆく意識の中、最後に聞いた彼女の言葉だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます