050 引っ越し

 引っ越しして三日は経つが荷物の片づけはおろかWi-Fiの設定もまだ済んでいない。出不精の俺にとってWi-Fiは生活になくてはならないものなのだ。今夜こそはと思いWi-Fiルーターを確認しにいく。


 散らかったリビングを探し回っていたが一向に見つからない。もしやと思いスマホのライトで照らしながらテレビの裏を覗いてみるとWi-Fiルーターが置いてあった。急いでスマホに暗号化キーを入力しWi-Fiがつながることを確認した。


 そのまま自分の場所に戻ると、同時に廊下の灯りが付いた。


「あれ? お兄ちゃん?」


 廊下の灯りに気付いたのか母親と父親も起きてきた。


「どうしたの夜中に?」

「なんかリビングでガサゴソ音がしたからお兄ちゃんかなあって」

「お兄ちゃんは今晩泊りだろう」

「まあ、そうなんだけど……」


 やがて口枠から覗く灯りが消えた。おそらく皆部屋に戻ったのだろう。これで心置きなくスマホがいじれる。そう思い俺はスマホの画面を見つめた。

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