019 飲み物

 営業マンの俺にとって道路脇の駐車スペースは憩いの場だ。とりわけ木陰の多いこの場所は俺にとって絶好の休憩ポイントでありオアシスなのである。


 ただ――ゴミが多いのが気にかかる。ゴミがパンパンに詰められたコンビニ袋や読み捨てられた雑誌、長距離トラックの運転手が捨てたペットボトルなどがあちこちに散乱している。


 今日もそんなゴミ達の住処に車を止めスマホをいじっていると一台のトラックが止まった。まあ、駐車スペースなのでトラックが止まるのは当たり前だが、降りてきた運転手がなんとゴミを拾い始めたのだ。捨てる人間は何度か見かけたが拾う人間には初めて出くわした。


 見るとペットボトルを五本程拾っているのが分かった。全て液体が入っているようなので恐らく尿が入ったペットボトルだ。路肩のゴミ拾いをして回る人の特集をテレビで見たことがあるが尿の入ったペットボトルが一番“きつい”と言っていた。県外ナンバーなのでおそらく長距離トラックの運転手なのだろう。自分らの仲間が出した“汚い”ゴミを率先して拾うその姿にとても感心した。


 五本ほどゴミを拾ったトラックの運転手は車に戻り休憩に入ったようだ。その姿を確認して俺はまたスマホのゲームに集中した。


 昼の休憩時間も終わりそうだったのでゲームをやめ、次の訪問先に移動することにした。例のトラックはもういなかったがその場所にゴミが落ちているのに気付いた。場所からするとトラックの助手席側だったので運転手も気付かなかったんだろう。正直言って俺もゴミを捨てたことはある。俺もたまには良い事をしようじゃないか――運転手の姿を思い出し、俺は空のペットボトルを五本程拾いあげ車に戻った。

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