012 縦読み好きの女

 くそっ、あの女俺のこと馬鹿にしやがって。昨日の喧嘩でも言いたい放題言いやがるし、挙句の果てに『平仮名しか読めないおバカさんだもんねぇ』だって? ふざけんのも大概にしろ。大体女の一人や二人位いいじゃねえか。つかお前はキープ要員だっつうの。

 ……ちっ、あの女からメッセージが来た。



 大好きなあなたへ

 好きになった

 きっかけは確か

 私のほうか

 らだったわね。

 良い雰囲気のバーに

 いつもいるあなたに

 こえをかけた時ここ

 ろが釘付けになった。

 結ばれる気がした。

 婚期を逃しちゃった

 しょうがない女だけど

 ただ…あなたが好き。

 いっしょにいたいよ。



 クソ長ったらしい文章寄こしやがって。にしても変な改行だな。……あー、縦読みか。なになに……『大好き私ら良いころ結婚したい』だって? 何言ってんだ? 良い頃でも何でもないじゃねぇか。

 ……まあいいや、俺は心が広いんだ。引き続きキープの席に居させてあげようじゃないか。さて、今日も暇だし、またこの女のとこにでも転がり込むかな。

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