007 未来が視えるアプリ

 今日は仕事が休みだったので暇つぶしになるアプリを探していた。暫くはダウンロードしては削除、を繰り返していたのだが少し気になるアプリを見つけてしまった。


 アプリ名は『未来が視えるアプリ』。


 何の捻りもないネーミングだが内容は凡そ予想がつく。恐らく占い系のアプリで名前や誕生日などを入力すると未来を占ってくれるのだろう。ありきたりなアプリだが、『視える』と言い切るあたりに若干興味を持った。


 まあ、暇つぶしにはなるかな――そう思いながらダウンロードし、そのアプリを起動する。


 アプリのスタート画面はいたってシンプルだった。真っ青な背景と真ん中に『未来を視る』と書かれた小さなアイコンのみ。会社名やコピーライトすら書かれていない。


 手抜きとも思えるその画面に若干肩透かしを食らいつつも俺はそのアイコンをタップしてみた。


 ――今夜、愛する人に殺される――


 いきなり浮かび上がった真っ赤な文字に体が一瞬こわばる。が、すぐ我に返り、怒りにまかせてアプリを削除した。――単なるたちの悪いジョークアプリだった。



「ちょっとぉ、資料まとめたいからそろそろタブレット返してよ!」後ろを振り向くと彼女が書類を片手に頬を膨らませていた。「私のタブレットなんだからね!」


「わりぃわりぃ。ほらっ。」俺は彼女にタブレットを返す。


「全く! 自分のスマホ使いなさいよ! 早く資料作らないと打ち合わせに間に合わないじゃない!」そう言いながら彼女は慣れた手つきでタブレットを操作し始めた。


 どうやら急ぎの打ち合わせが入ったようで休日出勤しなければならなくなったようだ。こういう時は上司やお得意様と一緒に飲んでくるようで帰りはいつも深夜になる。


「それにしても……夕飯はまた俺一人かぁ」独りごちつつ、俺はテレビのリモコンを手に取った。

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