ギルドなんて信じない!

頼りになる彼の言葉と共に、私は二人で調査に乗り出す。


まず私は冒険者に強い魔物の事を聞き、彼は冒険しながら強い魔物を探している。


そうしてすぐに、ギルドの怪しい点が見つかった。『奇妙な事に、ここの冒険者は魔物を解体しない様だね。』


「解体をしない事のどこが奇妙なの?解体はギルドがやってくれるから楽だと評判なのに。」


『ギルドがそういうサービスをする事、それ自体は確かに奇妙ではありません。


問題は解体するのが難しい魔物の報酬すら、解体前と後で値段が同じなのです。』


「なるほどね。まるで魔物を解体して、中を覗かれるのを嫌がってるみたいだけど。」


『実際、その通りでしょう。試しに適当な魔物を解体したら、文句を付けられ報酬が減額されましたから。』


彼の話で分かったのは、事態が思ったよりややこしそうという事。ギルドは色々と隠し事してるし。


言い換えれば、魔物の身体に何か秘密が隠されているのよね。それなら私に秘策がある。


「ねぇ、それなら魔物の身体に秘密がありそうなのよね。それならいい手があるの。手伝ってくれない?」


~~~~~


彼女に手伝うように言われて、持って来たのはとある花。それを他の粉やらと混ぜて、出来たポーション二つを渡される。


「このポーションは肉に入れて魔物に食べさせてね。その後は貴方がこのポーションを飲むの。


そうすれば魔物の匂いが分かるわ。後は魔物を倒しギルドに納品すれば、コッソリ行方を辿るだけ。」


『それでギルドの内情を探るって訳か。分かった、試してみよう。』その作戦を聞いた時は、多少の不安があった。


匂いを辿るという作戦、それ自体はいい考えだと思う。問題は納品された魔物の匂いを嗅ぎ分けられる程、人の嗅覚は鋭くないという事だ。


恐らく彼女から渡されたポーションで、嗅覚を強化させようという作戦だろう。だが、そんなに強力な効果のあるポーションなど聞いた事ない。


気になった私は、ポーションを少しだけ使い効果を試そうと決めた。


ギルドの近くにある、あまり人気のいない森。そこで私は、印を書いた小石を用意している。


追跡用のポーションを付けた小石だ。嗅覚を強化するポーションを飲んでから投げれば、簡単に見つけられる筈だろう。


目を瞑って投げ、石の匂いが遠くに向かう。まるで嗅覚が視覚に変わった気分。


これは、、、予想以上だな。今までこんなに効果のあるポーションを飲んだのは初めてだ。


ポーションの品質は、作る人の努力に比例する。きっと、かなりの努力をしてきたに違いない。


そう思うと、ますます彼女の待遇に腹が立つ。ギルドが彼女を騙し、努力で得た能力をタダで使うなどと。


彼女の能力で作られたポーションは、遠くからでも分かるぐらい素晴らしいのに、、、うん?


ふと遠くに、ゴブリンの斥候兵が見える。フラフラと動くその姿は、どこか様子がおかしい。


まるで魅了の魔法でも掛けられている様だ。そうしてゴブリンは、小石の元へ辿り着き立ち止まる。


なんか考えていた作戦とは違う結果になったが、とにかく魔物のおびき寄せは成功した。


後はコッソリ近づき倒し、口から追跡用のポーションを流し込む。そしてギルドに納品して準備は完了だな。


こうして私はギルドに向かう。『ほら、今度はそのまま持って来たぞ。ゴブリン一匹だ。』


『納品ありがとうございます。そろそろゴブリンも欲しいと思っていた所でしたから。』


そう話すギルドの受付は、皮肉でなく本気で喜んでる様子だ。たかがゴブリン一匹に。


おまけに、『それでは報酬です。綺麗に倒されているので、少し色を付けておきますね。』とまで言っている。


ゴブリン一匹にこれ程の報酬、ますます怪しい。こうなったら彼女の為にも、絶対にギルドの内情を調査しないとな。


ギルドを出て外でコッソリ隠れて待機。暫くするとギルドがコッソリ動き出した。


裏口から魔物が運び出されている。布に包まれ馬車に積まれて、どこか別の場所へ向かっている。


それならば、馬車をコッソリ後ろから尾行しよう。そう考えたが、尾行自体がバレると困る。


まぁ待て私よ、焦る必要はない。彼女から貰ったポーションで、匂いを辿ればいい話だ。


ゴブリンの乗った馬車を先に行かせて、私は匂いを追跡する。平原を進み森の奥へ入り、辿り着いたのは滝の近く。


すると滝の裏から人が現れ、馬車から荷物を取り出していく。私も滝の裏に入ろうかと考えたが、そうしたら中の人にバレるだろう。


どうしたものか。滝を眺めながら考えるも、そう簡単にいい案は思いつかない。


仕方ない、いったん帰る事にしよう。このまま滞在して滝の奴らにバレたら困るしな。


そうして彼女の元へ帰る途中、私は数匹のゴブリンと遭遇する。まるでオーガの様に強いゴブリンと。


~~~~~


彼が持って来た魔物を見た時、私はすぐに気づいた。「このゴブリン、身体が腐敗しているわ。」


そんな事はあり得ない。ついさっきまで生きていた身体が、こんなにもボロボロだなんて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る