第51話 鈍感
堺に土下座姿いや、星川のブチギレ姿を見た俺は毒気を抜かれてしまい、これ以上何かを言う気になれなれず、すぐに頭を上げるよう頼んだ。
「頭を上げてくれ。俺は何かされたわけでもないから、土下座までされる筋合いない。するならもっと別の相手がいるだろ」
暴言を吐かれたわけでもなく、暴力を振るわれたわけでもないので土下座されるのは気分が良くはない。
「湊川それは流石に無理だよ。コイツのせいで小鳥は確実に心に傷が出来てる。そんな状態で謝りに行っても小鳥にとって迷惑どころかさらに傷つけてしまう。だから、もう少し時間を空けて時が来た後、勇人にさせるわ。ほら立て!バカ彼氏!相手側がいいって言ってんだから、はよ立てやコラァ!これ以上は注目集めて迷惑なんだよ!分かれボケナス」
「はいーー!」
彼女からの強烈な怒声によって引き気味の返事をしながら、堺は土下座を止める。
(星川が堺のせいで注目を集めていると怒鳴っているが、一番注目を集めた要因は星川何だよな〜)
と内心思ったが、流石にそんなことを言えば怒りの矛先がこちらに向きそうなので俺は黙っておくことにした。
「湊川、ウチのバカ彼氏が本当にご迷惑をおかけしました」
「いや、もういいって星川が堺にビンタしまくっているを見て、溜まっていた溜飲は下がったし」
「本当?湊川ならコイツを幾らでも殴っていいのに」
そう言って、堺の首根っこを掴む星川。
「グェッ、夏美!僕にトドメを刺す気!」
「あん!何か文句でもあるのか!?」
ギロッ!
「いえ、ないです!さぁ、さぁ、湊川君僕を思いっきりぶん殴ってくれ」
自身の身の危険を感じて、星川にこれ以上は不味いと訴える堺。だが、そんな訴えは星川の鋭い眼光によって封殺され、堺は目を瞑りヤケクソ気味な声を上げる。
(え〜っと、これ殴った方がいいのか?)
という意味の視線を星川に向けると、無言で首を縦に振る。
ここで断ると堺が後で星川にボコボコにされそうなので、俺は一発だけ殴ることにした。
「じゃあ、一発だけ行くわ。歯食いしばれよ堺!」
拳に思いっきり力を込め、今一番言いたかったことこと叫びながら堺の顔面へ拳を放つ。
「処女奪っておいて彼女の気持ち疑ってんじゃねぇーー!」
「グベェ!骨がーー!」
「うわぁぉっ!えげつないの入れるね」
情け容赦のない俺のフルスイングパンチによって地面に叩きつけられた堺は、殴られた頬を抑え転がり回る。
その姿を見てケラケラと笑いながら星川は俺に親指を立てグットサインを送ってきた。
それにつられて笑いながら俺もグットサインを返す。
(
何て、叶いもしないことを願いながら。
「…………〇〇〇〇」
◇
小鳥視点
昼休み。私はなっちゃんに呼ばれて体育館の外にある階段に並んで座ってお喋りをしながら、お弁当を食べている。
久々になっちゃんとのお喋りは楽しかった。箸を動かすのを度々忘れてしまうくらいに。
昼休みが終わる間際になって、なっちゃんからゆーくんが何で今回あんなことをしたのかについて説明された。
「そっか…ゆーくんはそんなことを思ってたんだ。確かに私があんなことしたらそう思っちゃうのも仕方ないよね。……って!何でなっちゃん私が奏君のこと好きなこと知ってるの!私が自覚したのついさっきのことなのに」
「そりゃ、小鳥の湊川への対応見たら分かるわよ。幼馴染み舐めないで頂戴」
分からないわけじゃないと、なっちゃんは呆れたような目を向する。
「そんなに分かりやすいかな、私結構隠せてると思ってたけど」
だけど、私は思い当たる節が無くて首を傾げる。
「勇人の時から全然隠せてないわよ。まぁ、勇人は鈍感だったからそう思うのは仕方ないのかもね」
「ゆーくんは確かに鈍感だったからね。超がつくくらい」
「そうね。本当にあの鈍感野郎には苦労したわ。でも貴方も鈍感よね。ヒントあげてるのに全然大事なことを気づいていないんだもの」
(なっちゃんは何を言っているのだろう?ヒント?大事なこと?)
急に出てきた単語に、私は疑問符を浮かべるしか出来ない。
「まぁ、気づかない方が良いかもね小鳥は。じゃあね、また今度近い内にお話しましょ」
その言葉を残して、なっちゃんはお弁当箱を持って校舎に向かって行く。
私はその背中を眺めながら、なっちゃんの言葉の意味を理解しようと頭を働かせる。
が、結局私は何も思い浮かばずお弁当を持ってなっちゃんに何のことを言っているのか聞くために、後を走って追いかけた。
あとがき
次回今章ラストです。
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