断章

クリスマス記念SS とある家庭のクリスマス

 「ふん♪ふん♪〜♪」


 雪の降る寒い寒いクリスマスの夕方。一人の美女妻がキッチンで亜麻色の長い髪を揺らし上機嫌で鼻歌を歌いながら料理を作っていた。

 

 「ママ、クリスマスの日っていつも機嫌が良いよね?何か理由があるの?」


世間一般では盛り上がるクリスマスの日だが、今年高校生になった私 葉月はづきは友人達と昨日少し早いクリスマスパーティーを開催したため、クリスマス当日は家のリビングのコタツに入って特番を見ていた。番組が終わりCMが流れたところで、テレビの電源を落としたところで楽しそうな鼻歌を聞いて、前から気になっていたことを料理を作っているママに尋ねた。


「あれ?私、はーちゃんに言ったことなかったっけ?」


料理を作る手を緩めずに顔を私の方に向け、ママは話した気がするんだけどという表情を浮かべる。


「聞いたことありませーん」


私はいくら記憶を遡ってもママがこの日機嫌がいい理由を聞いた事がなかったため知らないと即答する。


「そっか、そういえば確かにパパに告白した日のことやプロポーズされた時の話はしたけど、パパと私の馴れ初めは言ったことなかったね」


「馴れ初めってことは、クリスマスの日に出会ったってことだよね。絶対素敵じゃん。私聞きたい!」


ママとパパの告白やプロポーズをした時の話はどれもドラマチックだっため、馴れ初めもきっと素敵なものだったに違いないと思い早く聞きたくて私はママに話すように促す。


「話してあげたいんだけど今手を離せないからちょっと待っててはーちゃん。パパが帰ってくる前に出来上がるようにしておきたいから」


ちょっと待ってね〜と言いながらママはちょうど出来上がったカルパッチョを冷蔵庫の中に入れ、それと入れ替えるように七面鳥を取り出しオーブンレンジの中に入れる。


「早く〜」


「もうちょっとだけ」


そう言ってママは使っていたまな板と包丁を洗い水切りカゴに入れた後手を洗いタオルで手を拭き、


「七面鳥よし、ピザよし、スープよし、シャンメリーとシャンパンもよし、ケーキはパパとかーくんが買ってくるから……うん。することないね」


全ての準備が終わったことを確認して私の横に座った。


「じゃ、お願いします」


「うーんまず何処から話そうかな〜?そうだ。お隣の在人あると君のお父さんとお母さんゆーくんとなっちゃんが私と幼馴染みだったのは知ってるよね」


母が確認するように私に問いかけてくる。


「うん。知ってるよ。とっても仲が良かったんだよね」


「そっかなら多分想像しやすいかな。パパと出会うまでの私はゆーくんのことが好きだったんだ。私のファーストキスとか色々な初めてをゆーくんにあげたんだよ」


「嘘!」


身内贔屓抜きでママは絶世の美女だ。そんなママを振るなんてありえないと思うと同時にママはパパにゾッコンなためファーストキスは当然パパだと私は思っていたので、ママの口から告げられた衝撃カミングアウトに大きな声を上げる。


「本当だよ。あっでも、エッチいのは全部パパが初めてだからね」


「その情報を聞いてどう反応していいのか分からないんだけど……」


「アハハっ、ごめんごめん余計なこと言っちゃったね。それでね私は高校二年生の今日と同じホワイトクリスマスの日ゆーくんに告白したんだ。結果は今の私を見たら分かると思うけど振られちゃった。そしてなっちゃんがその日ゆーくんの彼女になったの。そして、私は失恋のショックで街を一人彷徨い歩いててね。パパが当時バイトしてた喫茶店で仲良くしているカップルを見て、我慢できなくなって店の前で大泣きしたんだ」


ママはなんてことないように言うが、私の友人の一人がこの間同じクラスの男の子に告白して振られて今もショックで立ち直れていないのを見ているので、友人以上に長い間想っていた相手に振られたショックは物凄いんだろうなとか、どうやって立ち直ったんだろうとか恋愛経験のない私は色々気になることがあったけどそんなことより続きが気になったので黙って話の続きを聞く。


「周りの人は突然泣き出した私を見て不審がって声を掛けてくれなかっただけど、そんな時私に手を差し出してくれたのがサンタの格好をしたパパだったんだよ。ほっとけないって言ってパパは私を店の中に入れてダルガナコーヒーをご馳走してくれたんだ。あのダルガナコーヒー美味しかったなぁ〜。で、そこから私がパパに色々相談するようになって今に至るって感じ。どう?結構素敵でしょ?」


最後にパパに見つけてもらえなかったら私は死んでたかもなんて冗談を言って笑ったが、ママのパパとの他のエピソードを聞いている私は冗談じゃなくて本当にしそうだと思い顔を引き攣らせる。だが、すぐに頰を緩ませママに


「……素敵だね。それと良かったねママ。パパに見つけてもらえて」


と素直な感想を言うとママは


「うん。私はパパに見つけてもらえて幸せだよはーちゃん」


そう言って私の頭を撫で幸せそうに笑った。


「ただいまー」


「ママ、ただいまー!」


そのタイミングで小学生二年の弟 香美斗かみととパパの声が玄関から聞こえた。

私はママと一緒にパパ達を迎えようと立ち上がったところで、ママは私を置いて先に行きパパの元へ物凄いスピードで向かう。そして、私が追いついた時にはもうパパに抱きついていた。


「おかえり、奏くん」


「ただいま、小鳥」


そう言ってママとパパの二人はお互いに微笑むと熱い口付けを交わした。








「ママとパパいつまでそうしてるの?」


長い間口付けを交わすバカップルに私はこっちの方が恥ずかしくなってきたので声を掛ける。


「あっ、ごめん。つい。パパとかーくんは手を洗ってきてもうすぐご飯出来るから」


「す、すまん」


そう言ってママとパパはお互いに顔を赤くして離れる。長年夫婦なはずなのに未だにこんな初々しい反応をするのは家くらいだろうなと私は呆れ顔で思った。


「はーい!」


「香美斗走るな!ケーキが崩れる!」


香美斗がそう言ってバタバタと足音を立てて走りだしパパが慌てて追いかける。ママと私はそんな光景を見てお互いに顔を見合わせ笑う。




そんなわけで今日も湊川家は変わらず賑やかで幸せです。



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あとがき


突然ですが最終話です。

嘘です。


今回はご要望が多かった未来の話を書きました。


追記

こちらは話がひと段落したら断章扱いにして移動させます




























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