第16話 負けヒロインの叫び
私はあの日大好きなゆーくんに告白した。
私の隣には物心ついた時からずっとゆーくんがいた。保育園から小学校、中学校、高校までの間ずっと私の側にはゆーくんがいた。
何をするにもゆーくんと。
料理をする時も寝る時もお風呂に入る時だって昔は一緒だった。
ゆーくんを異性として意識したのは、いつだったかな?分かんないや。でも、小学校の低学年の頃から確実に意識していたと思う。
私は彼の優しいところが好きだった。髪の色が原因でいじめられていた星川 夏海ちゃん。なっちゃんに誰よりも早く救いの手を差し出したあの光景を今でも覚えている。私が運動会のリレーでこけてしまい、みんなに責められている時ゆーくんは
「僕が絶対に取り返すから」
って言って、私の分を取り返してくれたんだ。その他にも、小学校の修学旅行で私が迷子になった時、ゆーくんは必死で集合時間に遅れるのも気にせず探して見つけてくれた。
中学校になったら、胸が徐々に大きくなってきてそれを男子達に揶揄われるようになったんだけど、ゆーくんはそんな私を励まして、何度も庇ってくれた。
私が泣いている時、何も理由を聞かず側にゆーくんはいつもいてくれた。
毎年毎年私の誕生日のたびにプレゼントを真剣に考え渡してくれた。
そんな素敵なゆーくんに惹かれない方がおかしいよね。
でも、私は惹かれたままの状態から高校生になるまで踏み出せていなかった。
いや、違うね。なっちゃんが海外から帰ってきた時まで何もしていなかった。
幼馴染みっていう立場に甘えて、ゆーくんとの関係性を壊したく無いって言い訳して、私は動かなかった。
でも、そんな私の背中を押したのはなっちゃんだった。
私のことなんて無視して、自分の恋のことだけ優先すれば良いのに。
なっちゃんは私の話を聞いてくれて時には温かい言葉をくれた。それでいて、恋のライバルとしても厳しい言葉をくれた。
だから、私はゆーくんとの関係を一歩先に進める決意が出来たんだよ。
でもさ、決意できたからと言って全てが上手くいくわけなんてありえないよね。
だって、私が足踏みしていた間もなっちゃんは前々へ進んでいたんだから。
私がゆーくんに弁当を作った時、なっちゃんはゆーくんの夕飯を作っていた。
私がゆーくんと手を繋いだ時に、なっちゃんはゆーくんと恋人のように手を繋いでいた。
私がゆーくんの頰にキスをした時、なっちゃんはゆーくんの唇にキスをしていた。
私が出来ないと諦めて尻込みしていたことをなっちゃんは気持ちを強く持ち突き進んでいたんだ。
私なんかよりもずっとずっと強い覚悟を持って、なっちゃんはゆーくんを落とそうとしていた。
そして、クリスマスのあの日。鈍足な私がようやくなっちゃんと同じ時点に並んだの。だから、勝負した。胸に勝てるんじゃないかと言う淡い期待を抱いて。私はゆーくんとの思い出が詰まった高台で告白した。
結果は、湊川君が学校で聞いたと思うけど……負けちゃった。
あははは。当然だよ。……………わたじがまげるのなんてわかりぎっでだんだ。じがだない、じがだない。
…………でも、でもさ。まだあぎらめぎれないんだ。……あのばじょにいたいって、どなりにいたいってさけぶんだ、こころが……なっちゃんならって、あたまではみとめてるのに、こころがそれをみとめないの………。なっちゃんつきあうなんて……ゆるせないって。ゆーくんとすぐにわかれぢゃえって。ざいでいなことばかりおもいづくの……。
…………ねぇ、どうしたらいいかな?みなとがわくん。おしえて?
もう、わからないの。……リサちゃんにも、りんちゃんにもそうだんしたんだけどわからないの……
こんなこときいてめいわくだってわかってる。でも、あのひであったみなとがわくんならって、かってにきたいしちゃってるんだ。
……おねがい………わたしにおしえてよ………みなとがわくん………
わたしをたすけて
わたしにおしえて
どうしたらいいの?
どうしたらこの痛みを消せるの?
どうしたらゆーくんを忘れられるの?
「忘れることなんかできるかよ」
私の叫びに答えた彼の声は酷く辛そうだった。
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