第224話 世界の価値観

「ホリナどうして帰っちゃったのよ!」


 屋敷に入るなり私はホリナの元へと向かっていた。

 理由はどうして私の帰りをウェルズに任せたのかが聞きたかったらだ。


「お嬢様お帰りなさいませ。どうされたんですか?」

「帰りを何であんな奴に任せたのか聞きたいのよ!」


 私の質問にホリナは一瞬首を傾げたが、質問の意味を理解したのか、いつもの表情に戻った。


「ボーラス様の事ですね。ボーラス家の方ならお任せできますから、それにお家同士つながりがあった方が宜しいではないですか」


 ボーラスと言うのは確かウェルズの家名の事のはず。


「どういう事よ、なんでそんなに信用出来るのよ」

「何を言われてるんですか、ボーラス家と言えば、私のお仕えするソボール家には及びませんが名家ではありませんか。それぐらい私でも分かります」


 初耳の事だ。ゲーム内ではウェルズにはあまり触れられていないから仕方のない事なのだが。


「お家同士のつながりは大事です。縁があれば大きな信頼と仕事にも繋がります」

「だからと言って人に任せないでよ!」


 私の詰め寄りにホリナは不思議な顔をする。当たり前の事をしているのに当たり前の結果にならないと言う困惑の表情。


「ボーラス家の方ですよ、心配ありません。それだけ家名には信頼があるのですよ。お嬢様もソボール家を背負っているのですよ」


 ダメだ。分かってくれそうにもない。でもホリナはそれが当たり前だと信じてる。この世界では家名や身分、出身地が信頼になる。それを私はこの世界に来て散々と見て、聞いてきたはずだった。

 ヤンも自分で言っていた。教師からも言われた。それを気にはしてなかった。そんなもの関係ない。

 だけど、それを気にしないのは私だけだったんだと今実感せざる追えなかった。


「すみません、夕食の準備中でしたので失礼致します。出来上がりましたらお呼びしますのでお待ちください」


 ホリナはそのままいつもと変わりなく戻っていった。

 私はその姿に「せめて明日からはホリナ達に迎えに来て欲しい」と言うことすらタイミングを逃していた。

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