第99話 大きな庭の小さな冒険
「それじゃあ行きましょうか」
お互いに準備をして玄関ホールに集合した。
私もユリもドレスよりかは動きやすい服装に着替えてきた。
玄関ホールにある城の絵を確認して昨晩光の指していた場所を思い出す。
外は晴天で晴れているから天気が崩れることはなさそうだ。晴天すぎて雲がないから暑くなりすぎることの方が心配だ。
「えぇ、この天気なら見通しも良さそうです。何かあればすぐに分かるでしょう」
「任せたわ。私が先導するようにするからついて来て頂戴ね」
確認を済ませてドアから外に出る。
外に出ると当然先日私が通って来た道が広がる。
流石に外には私たち以外の一般人はいない。いるのは警備の兵だけ。
注意されないように警備の人が見てないタイミングで庭の中に入った。
木々が生茂る庭の中は枝から伸びた葉が太陽の光を遮って木漏れ日が指していて幻想的だった。
時折強く吹く風が木々特有の緑の匂いを運んで来て、思わず深呼吸をしたくなる。
「こっち方面ね」
部屋で記憶頼りで書いて来た手書きの庭の地図を手に方向を確かめて進んでいく。
同じような景色だけど、城が大きいから木々の間から見える城の一部を頼りに方向を見失うことはない。
「人が通った形跡はありませんね」
確かに私たちが通って来た道は足跡と踏みしめた草が残っている。それに対して私たちの先には足跡のようなものや、不自然に倒れた草などは見当たらない。
「ここはユリが見た人影が通ってないってことよね」
「えぇ、私が見たのは反対側のテラスからだったので。少し確かめて見たかったのはありますが。わざわざ見たところに出向くのも危険ですから」
「でも反対側で見たからって言ってもこっちにいないとは限らないのよね」
「その通りです。注意してください」
ユリの一言で一層周りに気を使いながら進む。
いきなりユリが私の肩を掴んだ。振り向いてどうしたのか聞こうと思うとそれより先に「静かに、そのまま」とユリの言葉が飛んできた。
耳を澄ますと私たちが歩いた時の音とは違う音が聞こえてきた。
小さな音が短い等間隔で鳴っている。
足音だ。地面に生えている草を、地面に落ちた葉を体重で潰していく音が微かに聞こえる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます