第98話 最終日の朝

「って事が昨日の夜中にあったの」


 今朝はユリと一緒に朝食を取りながら昨日の晩の出来事を話した。

 もう太陽が出ている今では再現できない現象だけど、ユリは私の話を信じてくれた。


「そんな事が……みてみたかったですね」

「見せたかったわ、すっごく残念。また来年見ましょ」

「えぇ、是非。ところで、今の話を聞いていた中で手掛かりになりそうな所は何もなかったような気がしたんですが、私はどこか聞き逃していましたか?」

「いえ、その通り。まだ私が見つけたのはまだあるの」

「勿体ぶらずに教えて下さい! 気になりますよ!」

「ごめんごめん、私が見つけたのは何かを指し示す座標のようなものを見つけたの」

「入口にある像にですか?」

「違うわ。階段のところに掛けられている大きな城の絵の中にね」


 そう、私が見つけたのは階段のある壁のところに掛けられている城の絵の中に一点だけ光っているのを見つける事ができた。

 私も最初は像に光が当たって、像を見れば何かが分かると思っていた。だから最初は焦った。でも見惚れずに周りを見渡した時に絵の中に一点の光を見つけた。

 恐らくは像の手の部分から反射した光が指したのだと思われる。反射した光は弱いから軌道は見えずに行き止まりの壁に光を留めたのだろう。

 ただ、他にいた2人はずっと像を見惚れていたし、気づいたのは私だけだと思う。


「私はそこに今回の本題のものがあると思っているわけ」

「なるほど。それが『月の奇跡』と呼んでいたものの正体かもしれないのですね」

「『奇跡』と『軌跡』の言葉遊びだったのかもしれないわよ」

「なるほど、『月の光の軌跡』と言われたら確かに光の筋と言う見方もあるかも知れませんね」


 まだ何かがあると決まったわけではないけど、私はもうそこに何かがあるものだと内心ワクワクしていた。そのせいか自然と朝食を口に運ぶスピードが早くなっている。


「それで、その場所と言うのはどこだったんですか?」

「庭の部分で、塀に近いところらへんだったわ」

「そうなると外に出なければいけないのですね」

「そうなの。でも、もしかしたらユリの見たって言う人影はガルド公の言う通り本当に何かを探していたのかもしれないわねー」

「なら尚更危険が伴いますね、私としては正直反対なのですが」

「そういうと思ったわ。あなたも真面目だもんね」


 ユリは何のことか分からずに首を傾げている。まさか自分が先輩のアルと比較されているとは思ってもいないだろう。


「でもあなたがいるじゃない、それに敷地内なんだし大丈夫よ」

「私なんてただの学生ですよ」

「今はそうかもしれないけど、いずれは立派な騎士になるんだから予行練習だと思って」


 それでもユリは納得のいっていないと言うのが表情に出ていた。

 後一押し彼女には必要なようだ。


「場所はある程度見当ついてるし、行って戻るだけ。外にいたのが既に見つけてたら何もないだろうし、もういないわよ。外のやつらが見つけてなければ私達が先に見つけてすぐに持って帰って終わりよ。そう考えると難しくないでしょ」

「そう言われるとそうなんですが」

「それだったらこうしましょ、危なくないと思えばすぐ撤退」

「……わかりました。私もついていきます」

「流石! 信じてたわ!」

「このまま行かなくても勝手に1人で行ってしまいそうですし、正直逆に心配です。その代わり、危ないと思ったらすぐ引き返しますよ」

「もちろん。だったらお互い用意だけして玄関ホールに集合ね!」


 なんとかユリを説得できた。またアルの時みたいに延々と説得するはめになるかと思って心配してたけど、割とすんなり行った事を喜ぶ。

 どうも溢れ出るワクワク感に気持ちが高揚していたのに気づいたのはユリと別れて部屋に戻って支度をしていた時だった。

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