第65話 聞いてくれる?
お医者様の所で軽く睡眠を取ってから宿まで戻って来た。
宿の部屋に戻ってくると中は静かだ。外では少しずつ雨がやんで来ているとはいえ、まだ陽も完全に上がってきていない、周りはほとんどが寝静まっている時間だし当然だ。
「おかえりなさいませ」
入口に垂らしていたカーテン代わりの布の奥から声がした。いつも聞いているホリナの声だ。
「ホリナッ!」
「ご迷惑をおかけしました」
「起き上がって大丈夫なの?」
「はい。腕の方も綺麗になっています。痕も残らなさそうです」
ベッドに上半身を起こして優しい笑顔で微笑んだ。
「わ、私今買い物行ってたんだ。お腹すいちゃって」
こんな遅い時間に帰ってきたことに、反射的に誤魔化してしまう。
「お友達を助けてあげることは出来ましたか?」
「な、何のこと?」
「知っています。あれだけ部屋の中で話されてたら私も起きますよ」
アルを説得してた時だ。うかつだった。熱が入りすぎて声のトーンを気にしてなかった。
「ごめん。危ないことしちゃって。でもちゃんと助けることできたよ」
「私には何も言えません。動けなくなってしまったのは私なのですから。心配で眠れませんでしたけど」
「ごめん」
「でも本当にいいお友達をお持ちになりました」
ベッド横の窓から下を見ながらそう言った。
「私が帰ってくる所見てたの?」
「はい。優しそうな方達でしたね」
ここに帰ってくるまでアルとヤンについてきてもらった。万が一のことがないようにと。その2人は入口につくと「俺らはいらないだろ」ってそのままお医者様の所に戻って行ったけど。
「ホリナ。何か食べたいのある? 陽が昇ったら私買ってくるわ。迎えに来るまでまだ時間あるでしょ」
「それなら私も一緒に」
「駄目よ。まだ寝てないと。私なら大丈夫だから、すぐそこまでだし」
少しずつ明るくなってくる窓の外を見ると雨は完全に止んで、空には雲もない。さっきまでの天気が嘘のように感じる。
どこかで鶏が鳴いてる。朝が来ることを告げているかのよう。きっと鳴き声を聞いて起きる人もいるだろう。
「ねぇホリナ。私、朝食を食べながら話したいことがいっぱいあるの。聞いてくれる?」
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