第66話 もう一つの結末
外では雨が強く打ち付けている。いくら大きな屋敷でも雨の音というのは完全には遮断できない。
部屋の中は外の天気とは逆に明るい。そんな部屋の中で部屋の主は椅子に腰を掛けて自分の爪を砥いでいる。
豪華な装飾が施された服。着こなしているというよりかは、着られているというのが正直な感想だ。だが、その感想を口にすることは出来ない。
「それで、結局何もできずに帰って来たのか。使えないなぁ」
不満、不機嫌と言った感情が滲み出ている。それは自分に向けられたものだ。
「従者に毒を打って引き離すことが出来、その後に町にいる野盗崩れに情報を売って襲うように仕向けたのですが、そこから思わぬ護衛がつきまして」
「それでそっからは何もできずに帰ってきたわけだ」
「申し訳ございません」
「結局あの女が痛い目にってないじゃないか! あいつは僕に楯突いたんだ! 痛い目見ないといけないんだよ! お前が小細工が得意って聞いたから使ってやったんだ」
「次は必ずご期待にお応えします」
「絶対やれよ。もちろん僕の指示だってばれないように、表立ってやるなよ」
「承知しています」
「分かったらもう出ていけ。僕は寝る」
言われた通りに部屋を出ていこうとする。
「おい!」
後ろから呼び止められる。自分としても早くこの部屋から抜け出したかった。甘ったるい香水の匂いが充満していて鼻おかしくなりそうだ。
「もう一度言っておく、次はないぞ。分かってるよなオーラン」
その言葉に頷くしか今の自分は出来なかった。
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