第51話 私のしたいこと 前編
「オーガストさんはヤンが今どこにいて、何をしようとしているかはご存知ですか?」
その質問にオーガストさんはアルの方を見て頷いた。
「どこにいるかは知らないな。だけど、何をしようとしているかは知っているよ。帰ってきた時に私からヤンに言ったのは『気を付けろ』だけしか言ってないけどね」
「心配ではないんですか?」
「もう騎士学校に行って私の手を離れているからね。手を貸してやりたい気持ちはあるが、身体が満足に動かないから足手まといだ。下層を前のように戻したい気持ちは下層に住む人間なら皆同じだ」
口調は穏やかでもその言葉には無念のような心情が込められているような気がした。
「ヤンが強いのも知っています、フロストが攻め込むための準備をしているのも知っています。それでも私は……心配です」
「死んでしまうかもしれないと?」
「はい。そうでなくても怪我をするかもしれません」
「あなたはヤンを近衛騎士にしたいと言ってくれた。それは少なからず怪我をするような、最悪死ぬような立場に近い所に立てるという意味ではないかな?」
その言葉に返答が詰まる。そうだ。要人のボディーガードという事はそう言った場面も少なくない立場だ。私は自分の周りに置けるだけと言う言葉に酔っていたけど、私自身で彼らを危険な立場に立たせているのかもしれない。
そう思うとオーガストさんの顔を見ることが出来なくなった。アルの方も見ることが出来ない。
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