「おい！　そこに居るのは昼間のやつじゃねーか！　動くんじゃねー！」

　私が頭を回転させている時に響いたのは聞き覚えのある声だった。

　声の方向から4人組がこっちに向かってきている。先頭に居る男は見覚えがある、昼間に私とぶつかった男だ。後ろには3人知らない男たちがついてきている。

　アルが私の右手を引っ張って、今きた道を戻っていく。

「どうするの？」

「逃げます。多勢に無勢です！　守りながらでは戦えない」

　アルはヤンに引けを取らないくらい強い。それでも彼は危険から私を遠ざけるために走った。

「でもこのままじゃ。フロストのとこに行っちゃう！　それはまずいんじゃないの！？」

「そんなことはしません。ただあいつらから少しだけでも姿を見えなくしたい」

　そう言って曲がり角を右へ左へと縦横無尽に下層の道を駆け抜けていく。もう私にはここがどこか分からない。

　後ろから足音がいくつも追ってくる。心なしか少しづつ音が近づいてきているようにも思える。私を連れている分遅いから差が縮まってくる。

　何個目か覚えていない十字路に差し掛かると左に入ってアルは足を止めた。私に声を出すなと言うジェスチャーを口元に指を当てて示した。

　ゆっくりと歩いてもう一度左に曲がると下の道の上を通る歩道橋のような道があった。そこを2人で屈んで下の道から姿が見えないように渡り切った。

　下からは「手分けして探せ！」という怒号が今来た道から響いている。もう手元には傘もなく私とアルは雨の中慎重に道を進んでいる。

「もう少しです。もう少し辛抱してください」

　アルが小さな声で私にささやきかけた。周りの雨音にかき消されそうな声だけど、私ははっきりとその言葉を聞いた。

　その時、先の丁字路から男が1人私たちと出会い頭に出会うように姿を現した。

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