第46話 アルの堅物! 後編

「いい人だったわね」


 建物を出た私たちはまた下層を歩いていた。


「いいやつではありますね。もとより情報交換なんかせずでも彼は全てこっちに教えるつもりだったでしょうけど」

「そうなの? なんで?」

「最後に言っていたでしょう。『立場』です。彼もリーダーと言われているからにはついてくる人の事を守らないといけないんです。だけど一方的に高層の人間からもらうと下層リーダーとしては面子が立たないんです。しかも少しでも勝つようにするなら、僕を巻き込むために情報を伝えなければならない。それで一応交換という事なんです」

「面倒くさいわね」


 私の言葉にアルは苦笑した。


「でも結局ヤンがどこにいるかは分からなかったわね」

「そうですね。けど少なくともヤンは動くことは分かりました。それに自分の目で場所を確認するなら、アジトの近くに行っているはずです」

「えーと、そしたら私は次にどこに行けばいいの?」

「宿に帰りますよ」


 こっちを見て「何を言い出すんだ」と言わんばかりのあきれた顔を向けてきた。


「あなたを巻き込むためにフロストは情報教えてくれたんでしょ! 宿に戻ってなんかいられないじゃない!」

「それは彼の都合です。当初の目的通り情報を伝えることはできました。だからこれで終わりです。後は被害が少なく終わるように祈っておきましょう」

「助けたいんじゃなかったの!? 言ってたじゃない!?」


 とりあえずここまで連れて来たら後は勢いでこのまま助けに行ってくれるかと思ったけど意外と冷静だった。アルを圧倒してこのまま最後まで連れて行く。そのために私は声を大にして言い放った。

 それでもアルは納得した表情はしない。


「十分です。きっちりと準備もしている。前回は内部の裏切りがあって負けた。今回はそれにも注意している。相手側の人数、場所も把握している。これ以上の行動は危険度数があがるそれだけです」


 堅物とは知っていたけど、ここまでとは……。この堅物頭をどう説得するか……。私の頭はフル回転してる。

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