第45話 アルの堅物! 前編

「情報の交換をしにきた」

「情報? なんの?」

「決まってる。キースの事だ」


 アルの提案にフロストは値踏みをしている。


「ヤンがここに来たということはキース一派の事だろ。相手のアジトの場所、構成人数なんかは知っておいて損はないだろ」

「アジトの場所は知ってる。けど確かに構成人数なんかは裏どりもしたいところだ。それで、そっちは何が目的だ?」

「ヤンの居る場所が知りたい」

「だったらダメだ。居る場所は知らない。一方的にもらうだけになる。それは交換じゃねぇ」


 その言葉には強固な意志が現れている。


「それなら今後の行動だ。ヤンに何を言ったかだけ教えてくれればいい」

「それならいい、俺は『明後日夜に攻撃に出るつもりだったのを今日の深夜に変えた』それを伝えただけだ。これでいいか」

「分かった。そしたらこっちも知っている情報を教える。高層の調べではキース一派の人間は20人、ボスのキース含めてだ。側近のボルボをいつも近くに待機させている」

「全員外の人間か?」

「あぁそうだ」

 

 フロストはその返答に腕を組んで考え出した。アルはその様子をじっと見つめている。

 明かり代わりの蝋燭がどこからか入ってくる風に吹かれ揺れている。


「分かった。だけど1つ訂正だ。そこに後3人追加だ。うちの人間が最初からあっちについてたみたいだからな」

「本当か?」

「本当だ。そうじゃなけりゃここまでやられない。裏切りを見抜けなかったのが悪いけどな」


 そう言ったフロストは言葉では笑っていても悲しそうだった。


「それと俺たち下層の人間のお茶を嫌そうな顔もせずに飲んでくれた客に感謝して特別にヤンが俺に言った事を教えてやる。『俺は自分で見た情報を信じる』だそうだ。後は勝手に1人で動くとよ」

「分かった。ありがとう。それでは行きましょう」

「お前も立場があるだろ。あんまり下層の事に首突っ込まない方がいい」


 アルとフロストのやり取りはそこで終わった。アルが椅子から立って部屋から出ていく、私はアルにまた促されて後をついていった。

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