「久しぶりだなフロスト」

「その言葉は今日で2度目だ」

「ヤンも来てたんだろう。聞いた」

「それで何の用だ？」

　ベッドで横になるフロストと短い言葉を投げ合っている。

　フロストは包帯が所々に巻いてあって、なんだか痛々しい。これがキース一派との抗争の後なのかと思うとヤンが尚更心配になる。

　フロストと目があった。今知ったかのように目を細めてこっちを凝視している。

「ヴァリ。椅子とテーブル持ってきてくれ」

　その指示にフロストの横に男が頷いて奥から小さなテーブルと椅子を2つ運んで私たちの前に置いた。

「気が利かなくて悪いな。アルお前も連れがいるって言えよ。もてなすお茶も碌なもんはないが我慢してくれや」

　私とアルに向けての言葉は乱暴だけど優しさが垣間見える。この行動こそ彼が慕われるリーダーという証なのかもしれない。

　ヴァリと言われた人は続けて奥からお茶を持ってきて私とアルの前に置いた。

「頂きます。ありがとうございます」

　お茶は少しぬるいけど、決して不味いというほどのものでもなく、もてなしのお茶としては十分だ。

　ヴァリは頷くだけで何も言わずに枕元に戻って行った。

「無愛想で言葉が足らないのがこいつなんだ。悪いな」

「いえいえ。大丈夫です」

　そんな気遣いの言葉を私は手を振って否定した。

「ところであんたは誰だ？　こいつのあれか？」

　自分の小指を立てながら私に楽しそうに話しかけてきた。

　さっきよりも私は手を素早く振ってしまう。

フロストはその反応を見て笑った後に一回大きく息を吐いた。

「さて、それで話を戻そうかアル」

　さっきまでのフロストから言葉のトーンを最初に戻して話の続きに戻った。

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